1. Cas9とCas12a (Cpf1)はニッカーゼとしても機能する
[出典] "Target-dependent nickase activities of the CRISPR–Cas nucleases Cpf1 and Cas9" Fu BXH [..]  Robb GB, Fire AZ. Nat Microbiol. 2019-03-04.
  • Stanford University School of Medicineの研究チームは今回、SpCas9およびAs-/Fn-/Lb-Cas12aが、二本鎖DNA切断活性に加えて、一本鎖切断のニッカーゼ活性も備えていることを示した。
  • はじめに、合成プラスミドのライブラリーを標的とする精製したCas9によるin vitro編集実験で示した。このニッカーゼ活性は、gRNAと標的配列の間のミスマッチのタイプに依存した。
  • 続いて、Saccharomyces cerevisiae in vivo実験で、gRNAと完全に相補的な標的配列においても、gRNAと一定のパターンのミスマッチを帯びた配列においても、配列依存でニック誘導が可能なことを示した。
  • 今回の発見は、CRISPRシステムにおけるスペーサ獲得やオフターゲット作用の機構、および、新たなニッキングによるゲノム編集法に示唆するところ大である。
2. CRISPR-Cas9スクリーンによる抗体薬物複合体 (ADC)の毒性の制御因子同定
[出典] "Systematic identification of regulators of antibody-drug conjugate toxicity using CRISPR-Cas9 screens" Tsui CK [..]  Bassik MC. bioRxiv. 2019-03-03
  • ADCは、細胞毒性を帯びた化学療法剤を標的抗原を発現している細胞へ特異的に送達することを可能とし、癌療法の一翼を担うに至ったが、ADCの分子機序は詳らかにされていない。
  • Stanford University School of Medicine、Stanford UniversityならびにCatalent Biologicsの研究グループは今回、ゲノムワイドCRISPR-Cas9 KOスクリーンにより、ADCの腫瘍細胞への内在化と活性化を調節する遺伝子を探索し、リソソーム輸送を制御する一連の既知および新奇遺伝子を同定した。また、ADCを構成するリンカーが開裂不可能な場合と開裂可能なvaline-citrullineリンカーの場合の機序の違いも同定した。後者では内在化時にVCリンカーが迅速に分解されリソソーム輸送機構を必要としない。
  • さらに、シアル酸生合成を阻害すると、ADCsに対する感受性が亢進することも見出した。例えば、Her2陽性の乳癌治療承認ADCであるトラスツズマブ エムタンシンに対する感受性である。
  • 関連crisp_bio記事2018-05-14 抗体-薬物複合体(ADC):内在化不要な次世代へ
3. ゲノムワイドスクリーンにより、小胞体オートファジー (ER-phagy)の必須遺伝子とパスウエイを同定
[出典] "A genome-wide screen for ER autophagy highlights key roles of mitochondrial metabolism and ER- resident UFMylation" Liang JR, Lingeman E [..] Corn JE. bioRxiv. 2019-02-25.
  • ER-phagyがヒト神経障害に関与するとみられているが、限られた因子以上の詳細は不明である
  • UC Berkeleyの研究チームは今回、ER-phagyレポーターとゲノムワイドCRISPRiスクリーニングを介してヒトER-phagyに関与する200因子を同定し、意外にもミトコンドリア代謝とER内のUFMylationがER-phagyに必須であることを見出した。
4. CRISPR-Cas9がゼブラフィッシュ胚に誘導する一塩基変異 (SNV)の解析からは、オフターゲット編集は限定的である
[出典] "Analysis of single nucleotide variants in CRISPR-Cas9 edited zebrafish embryos shows no evidence of off-target inflation"  Katsanis N,  Mooney M, Davis ED. bioRxiv. 2019-03-05.
  • 主としてマウスでの実験で示されてきたCRISPR-Cas9の高頻度なオフターゲット編集とオンターゲットへの望ましくない変異誘導は、CRISPR-Cas9の臨床展開への障害である。
  • Duke Universityの研究チームは今回、ゼブラフィッシュの52個の胚のゲノム編集がもたらすSNVをトリオ解析した。具体的にはF0のコントロールとCRISPR-Cas9編集胚について56種類のエクソームの解析、および、F0ペア近交系の16種類のエクソームの全エクソームシーケンシングを行なった。
  • 第2世代 (F1)には、第1世代 (F0)にもともと存在した変異や自然発生する変異を超える変異は誘導されない結果を得た。
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  • 2018-03-28 「マウスにおける大量のCRISPR-Cas9オフターゲット編集発生」論文を巡る論争結着(2018-03-31更新)
5. [レビュー] モデル動物ゼブラフィッシュのCRISPRゲノム編集ツールボックスの拡充
[出典] REVIEW "Expanding the CRISPR Toolbox in Zebrafish for Studying Development and Disease" Liu K, Petree C, Requena T, Varshney P,  Varshney GK (Oklahoma Medical Research Foundation). Front Cell Dev Biol. 2019-03-04.
  • ゼブラフィッシュは、発生学や医学に有用なモデル動物であり、CRISPR技術の登場により多様なゲノム編集が可能になった:標的への変異誘発とその同定;ヌクレアーゼの改変と発見に基づく標的可能範囲の拡張 (Cas9オーソログ;Cas9変異体;Cas12a (Cpf1);Base Editor (BE);Adenine Base Editor (ABE);転写調節とエピゲノム 編集;Cas9に依る細胞系譜追跡
6. HI-Edit:半数体誘導系統を利用してエリート種作物のゲノム編集変異体を1回の交雑で樹立する
[出典] "One-step genome editing of elite crop germplasm during haploid induction" Kelliher  T [..] Que Q. Nat Biotechnol. 2019-03-04.
  • CRISPR-Cas9技術によって、植物細胞ゲノムの効率的編集が可能になったが、大半の作物種は、アグロバクテリウムやパーティクル・ガン法によるCRISPR/Cas9システム送達を受け入れない。この課題を解決する手法が工夫されてきたがいずれも複雑かつ高コストで、しかも遺伝型に依存する。
  • Syngenta Crop Protection、University of GeorgiaならびにPairwise Plantsの研究チームは今回、ゲノム編集を加えた半数体誘導 (haploid inducsiton, HI)花粉でエリート種胚を受精させることで、単子葉作物 (トウモロコシと小麦)および双子葉作物 (シロイヌナズナ)の新生種子のゲノム編集を実現し、この簡便な手法をHI-Editと命名した。
  • 得られた作物には、半数体誘導性の片親のDNAおよびCRISPR/Cas9システムは残存しておらず、形質の検証や、商品化に適している。
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