1. メタゲノムデータから再構築した> 200 kbpのファージゲノムに、多様なCRISPR-Casシステムが存在
[出典] "Clades of huge phage from across Earth's ecosystems" Al­Shayeb B, Sachdeva R [..] Banfield JF. bioRxiv. 2019-03-11. > Nature. 2020 Feb;578(7795):425-431; [NEWS] New Study Shows Huge Phages Are Everywhere. Henderson H. Innovative Genomics Institute 2020-02-12.

 米国、デンマーク、日本、カナダ、中国、南アフリカ、フランスならびに英国の共同研究グループの報告 (crisp_bio注 - 2020-02-27:以下のテキストはbioRxiv版に準拠しています。Nature版にてアブストラクトと図に大きな改訂は見られませでした。数字の微小な改訂があり再確認した数字は以下のテキスト内で太字にしました。詳細についてはNature原文でご確認のほどをお願い致します)
  • これまで、ファージゲノムのサイズは平均50,000 bp (50 kbp)とされてきた。研究グループは今回、ヒト、動物、土壌、河川、湖水、地下水、地下深部、海洋、温泉、バイオリアクター、集中治療室など多様なエコシステム由来メタゲノムから200 - 735 kbpと通例になく大型のファージゲノムを再構築し (これまでの最大は596 kb)、175種類のファージ配列からマニュアルで環状ゲノム35種類を完成した。最大7,694アミノ酸のタンパク質など新規因子を同定する中で、タイプII、V-­I、V-­UおよびV-Fを含むCRISPR-Casシステム を同定した。
  • ファージCRISPR-Casシステムは小型であった (平均値で、クラスIシステムの41に対して6リピート)。宿主の転写因子や翻訳因子などの遺伝子や遺伝子間領域を標的とするスペーサの他に、他のファージの構造や遺伝子調節を担う遺伝子を標的とするスペーサも存在した。
  • ファージCRISPR-Casシステムのほとんどに、スペーサ獲得を担うタンパク質 (Cas1, Cas2およびCas4)が見られず、多くは干渉に関与する遺伝子を欠いていた。例えば、タイプI-CはCas1とCas2を持たず、Cas3の代わりにヘリカーゼを帯びているファージが存在した。このファージは一方で、新奇の~750 aaのタイプV エフェクター候補を帯びていた (CasΦをCas12Jと命名)。
  • ファージゲノムには、系統樹上で、抗-CRISPRタンパク質 (AcrVA5, AcrVA2, およびAcrIIA7)とクラスタを形成するタンパク質も存在した。
2. 一連の抗-CRISPRタンパク質(Acrs)タイプIICのCRISPR-Cas9阻害分子機構は多様である
[出典] "Diverse Mechanisms of CRISPR-Cas9 Inhibition by Type IIC Anti-CRISPR Proteins" Zhu Y, Gao A [..] Serganov A, Gao P. Mol Cell. 2019-03-05.
  • 中国科学院生物物理研究所とNew York University School of Medicineの研究チームは今回、Neisseria meningitidis Cas9 (NmeCas9)を阻害するAcrIIC1, AcrIIC2ならびにAcrIIC3のうち、AcrIIC2とAcrIIC3の生化学的解析とX線結晶構造解析から、両者のCas9阻害の分子機構が異なることを見出した;[構造情報] 6J9K Apo_AcrIIC2 (分解能 2.234 Å);6J9M NmeBH+AcrIIC2 (分解能 2.394 Å);6J9L  FnoBH+AcrIIC2 (分解能 1.78 Å);6J9N NmeHNH+AcrIIC3 (分解能 2.60Å)
  • AcrIIC2は二量体化し、Cas9のBH (ブリッジヘリックス)モチーフに結合することで、Cas9とsgRNAとの結合とおよび標的dsDNAへの結合の双方に干渉する;AcrIIC3は、Cas9のHNHドメインの表面に結合することでCas9の標的dsDNA結合に干渉し、同時に、RECローブに結合することで、AcrIIC3-Cas9複合体を二量体化する (原論文 Graphical Abstractのモデル図参照)。
  • 先行研究で報告されていたAcrIIC1のNmeCas9のHNHドメインへの結合は、HNH上での結合部位が異なり、両者同時結合が可能であった。
  • サイズ排除クロマトグラファイーとSDS-PAGEの解析結果は、AcrIIC1/2/3が同時にNmeCas9に結合可能なことを示した (原論文Figure 6参照)。
  • AcrIIC2は、NmeCas9のオーソログ (Spy-, Sau, Fno-, Cje-)に結合し、阻害効率は異なるが、いずれのCas9にも干渉する一方で、 AcrIIC3は、NmeCas9特異的であった。
3. タイプIII-A CRISPR-CasシステムのCsm複合体を構成するサブユニットの機能を腑分け
[出典] "Genetic Dissection of the Type III-A CRISPR-Cas System Csm Complex Reveals Roles of Individual Subunits" Mogila I [..] Tamulaitis G, Siksnys V. Cell Rep. 2019-03-05.
  • Streptococcus thermophilusの成熟Csm (StCsm)は、Cas10:Csm2:Csm3:Csm4:Csm5のサブユニットと40-ntのcrRNAで構成され、3種類の触媒ドメイン (RNase/Csm3; ssDNase/Cas10-HD); cyclic oligoadenylates synthase/Cas10-Palm)が協働して侵入核酸に免疫応答する。
  • Vilnius Universityの研究チームは今回、各サブニットの遺伝子破壊実験から各サブニットの機能を同定し、Csm5が標的RNAへの結合の鍵を握り、Csm2がCsm3によるRNAの多重切断を保証することを明らかにした (原論文Graphical Abstract参照)。
  • 機能同定の結果を活かして、3種類の触媒活性を帯びたCsm3、Csm4およびCas10の各サブユニットとcrRNAからなるミニマルCsm複合体を構築した。
4. [レビュー] gRNAs改変によるCRISPRゲノム編集技術の向上
[出典] REVIEW "Improving CRISPR Genome Editing by Engineering Guide RNAs" Moon SB, Kim DY, Ko JH, Kim JS, Kim YS. Trends Biotechnol. 2019-03-04.
  • KRIBBなど韓国CRISPR研究グループによるレビュー:gRNAsは、化学合成、in vitro転写 (IVT)あるいは細胞内転写システムにより構築;gRNAsには、化学修飾、スペーサ長改変、スペーサまたはスキャフォールドの配列改変、DNAまたはRNA成分の付加、および部分配列のDNAへの置換などの操作を加えることが可能;gRNAs改変によって、ゲノム編集効率の向上、標的選択性(精度)の向上、多重化、およびゲノム編集の多様化が可能。
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