(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/16)
  • Corresponding author: 近藤昌夫(大阪大学)
  • Claudin-1(クローディン-1; CLDN-1)は、細胞間接着構造の基本骨格を担うタンパク質であり、薬剤吸収、感染防御ならびにがん療法の格好の標的である。研究チームなどの先行研究から、CLDN-1の細胞外ドメインを標的とするマウスモノクローナル抗体が、薬剤の上皮吸収を亢進し、ヒト肝細胞へのC型肝炎ウイルスの感染を防止することが、報告されていた。研究チームは今回、抗CLDN-1 ヒト/マウスキメラモノクローナル抗体を作出し、3A2クローン由来IgG1(xi-3A2)とその変異体(G236A/S239D/I332E)の機能を解析比較した。
    • Xi-3A2は、マウスにおいて、ヒトCLDNsを恒常的に発現するHT-1080細胞が移植された組織に偏在した。
    • Fcγ受容体Ⅲaレポーター・アッセイ:xi-3A2とその変異体はいずれもFcγ受容体Ⅲaを活性化するが、変異体がより強く活性化。
    • HT-1080/hCLDNsを異種移植したマウスin vivo における抗腫瘍性:xi-3A2とその変異体はいずれも抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を示したが、変異体がより強い抗腫瘍性を発揮。
    • Claudin-1が正常細胞にも発現することに起因するリスク:xi-3A2とその変異体はヒトCLDN-1に結合しマウスCLDN-1には結合しないため、今回のマウスモデルでの安全性検証は不可能であったが、ヒト肝臓キメラマウスに投与した3A2は、ヒト化肝臓に対して毒性を示さなかった。
    • 先行研究と合わせて、抗CLDN-1モノクローナル抗体3A2は、C型肝炎ウイルスに関連する肝細胞がん療法への展開が期待される。