1. ナノニードル・アレイ (NNA) によりCas9-sgRNA RNPを細胞に直接送達
[出典] "Direct Delivery of Cas9-sgRNA Ribonucleoproteins into Cells Using a Nanoneedle Array" Yamagishi A [..] Nakamura C. Appl Sci. 2019-03-07. 
  • 産総研、農工大ならびに静岡大の研究グループは今回、直径200 nm x 長さ25μmのニードルの密なアレイ (NNA 原論文Figure1引用下図 B 参照)によるCas9-sgRNA溶液の表面吸着と放出 (下図 C 参照)を利用して、RNPを細胞へ送達し、細胞内での編集活性を示すことをモデルシステムで確認  (下図 D 参照) Nanoneedle 2019-03-13 16.29.22
  • 続いて、HEK293T細胞にてRNP送達を確認し、HeLa細胞内でレポータEGFPノックアウト (効率32%)、FP10SC2マウス乳がん細胞でのNestinノックアウト (効率16%)を達成。
  • 今後、効率の改善とオフターゲット作用の評価が必要である。一方で、ドナーDNAとRNPの2ステップ直接送達によるHDRを介したノックインも可能とした。
  • 研究グループはこれまで、ナノニードルを50回細胞に挿しても細胞の倍加速度に影響を与えないこと、抗体で機能化したNNAによって神経幹細胞の神経細胞への分化誘導など、NNAによる細胞操作の成果を報告している。
2. Kunkel法に基づき共有結合閉環状 (covalently-closed-circular, 3Cs)gRNAを合成する手法を開発し、偏りの無い高品質なgRNAライブラリーを構築
[出典] "Circular synthesized CRISPR/Cas gRNAs for functional interrogations in the coding and noncoding genome" Wegner M [..] Kaulich M. eLIFE. 2019-03-06.
  • Goethe UniversityとUCSDの研究グループは今回、3Cs gRNAにより、PCR増幅とクローニングによらずに、ゲノムワイドgRNAライブラリを構築し、その効用を実証した (下図は、原論文Figure 1の一部を引用した3Cs gRNA作出法のワークフロー)。 3Cs gRNA 2019-03-13 15.05.24
  • テロメラーゼ不死化網膜色素上皮細胞 (hTERT-RPE1)を対象として、ヒトの脱ユビキチン化酵素 (DUB)を全てを標的とする細胞増殖を指標とするスクリーンにより、各DUBの必須性を判定し、既知および新奇機能を同定;コーディング領域とノンコーデング領域を同時に標的可能とするライブラリを構築し、抗腫瘍抗生物質ドキソルビシンに対する耐性に関与する遺伝子、プロモーター隣接領域、転写因子とCTCF結合部位を同定し、ノンコーディング領域が薬剤耐性に関与することを明らかに;さらに、オンターゲット活性のレベルを保ったままオフターゲット作用を低減するとされる短縮型gRNAs (17-nt)のゲノムワイド3Cs gRNAライブラリーを構築
3. 機能メタゲノミクスによりヒトマイクロバイオームから抗-CRISPR (Acr)タンパク質を発見
[出典] "Functional metagenomics-guided discovery of potent Cas9 inhibitors in the human microbiome"  Forsberg KJ [..] Malik HS. bioRxiv. 2019-03-06.
  • これまでに発見されたacr遺伝子の多くについて配列保存性が低いことから、配列の相同性に基づくacr遺伝子の探索には限界がある。Fred Hutchinson Cancer Research CenterとSeattle Universityの研究チームは、CRISPR-Casからプラスミドを保護する性能を指標として、メタゲノム由来のDNAからacr遺伝子を同定する機能メタゲノミクスの手法を開発した (原投稿Figure 1引用下図参照)。Functional metagnomics 2019-03-13 22.23.09
    この手法は、Arcタンパク質が単一の遺伝子から発現し、多くの遺伝的背景で機能することから、acr遺伝子同定に適している。
  • 研究チームはこの手法により、ヒトの口腔と腸のメタゲノムから、SpyCas9活性を阻害する多様なクローンを発見した。Cas9を最も強く阻害するクローンはLachnospiraceaeファージ由来であり、新奇なAcrを帯びていた。 AcrIIA11と命名したこのAcrは、SpyCas9とdsDNAの双方に結合し、プラスミドとファージを、バクテリアのCRISPR/Cas9獲得免疫機構から保護した。
  • AcrIIA11のホモログはバクテリア門にひろく分布しており、いずれも、SpyCas9に対する阻害活性を帯びていた。
  • 関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/01/01 [第1項] 抗CRISPRタンパク質はCRISPR-Cas9とdsDNAの結合を競合阻害する (2報)
4. Roseburia intestinalisのプロファージはマウス腸内で溶菌化する一方で宿主にスペーサを提供する
[出典] "The enemy from within: a prophage of Roseburia intestinalis systematically turns lytic in the mouse gut, driving bacterial adaptation by CRISPR spacer acquisition" Cornuault JK [..] De Paepe M. bioRxiv. 2019-03-13.
  • 腸内菌叢は門レベルでは長期間安定しているが種レベルでは短期間で大きく変動する。食品や抗生物質は腸内菌叢の組成に影響を与えるが、種レベルの変動の主因ではない。Université Paris-Saclayの研究グループは今回、バクテリアとファージの相互作用が、バクテリアの集団の消長に大きな影響を与えることを示唆する結果を得た。
  • ノトバイオートマウスにEscherichia coliRoseburia intestinalisを定着後、16, 19, 25, 28および33日に、のべ330クローンR. intestinalisを分析し、溶原化していたファージ(プロファージ)二種類、JekyllとShimadzu、のうち、Shimadzuが"ultravirulent" Shimadzuへと進化し、R. intestinalis集団を崩壊させることを見出した。次いで、ファージ感染がホスト・バクテリアのファージ・スペーサ獲得を加速し、ホストのファージ耐性を進化させ、集団が復活するとした。