(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/21)
  • Corresponding author: 太田元規(名古屋大学)
  • タンパク質間相互作用 (PPI) ネットワークにおいて、多数のタンパク質と相互作用するハブ・タンパク質はネットワーク作用の鍵を握っている。ハブ・タンパク質の構造や機能について様々な分析が行われてきた。その中で、天然変性領域のように、ハブになる傾向のタンパク質と、核局在する傾向のタンパク質の双方に共通な特性が存在していた。
  • 研究チームは今回、細胞内局在の観点からタンパク質の相互作用数を統計解析し、細胞内における局在が多重なタンパク質がハブである(以下、ハブ性)という明確な傾向を見出した。この細胞内局在の観点からのPPIの分析は、Human Protein Reference DatabaseとUniProtから細胞局在の情報も抽出したヒト・タンパク質19,461種の36,939組の相互作用を対象として行った。
    • 多重局在とハブ性の相関は、核(nucleus)と細胞質(cytoplasm)に多重局在するタンパク質(以下、NCP)、細胞質と細胞膜(cell membrane)多重局在のCMP、ならびに、核/細胞質/細胞膜に多重局在するNCMPにおいて、特に強く見られた。
    • NCP:キーワード分析から、翻訳後修飾と転写に関するタンパク質がハブ性が高く、マルチドメインと天然変性領域の構造上の特徴を有する;相互作用数が顕著に多いタンパク質のほとんどはシグナル伝達経路に関与する転写因子またはコレギュレーターである; 天然変性領域のリン酸化およびまたはユビキチン化を契機として細胞質から核へ移行する
    • CMPとNCMP:相互作用数の多いタンパク質はキナーゼまたはユニキチンリガーゼ;多くは、細胞膜の細胞室側に位置し、シグナル伝達経路の上流で調節;細胞外から核へのシグナル伝達に関与
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