[出典] "CRISPR/Cas9-based mutagenesis frequently provokes on-target mRNA misregulation" Tuladhar R [..] Hwang TH, Lum L. bioRxiv. 2019-03-20.

背景
  • CRISPR/CasによるDSBがエラープローンなNHEJパスウエイで修復される際に、標的領域にINDELsが挿入される。
  • CRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウトの分子機序は主として、このINDLEsがフレームシフトを引き起こした場合に未成熟終止コドン (premature termination codon: PTC)が生成され、その結果、標的遺伝子のオープンリーディングフレーム領域から転写された変異mRNAが、ナンセンス変異依存mRNA分解機構 (Nonsense-mediated mRNA decay: NMD)によって分解・除去される機構に依存している。
  • 一方で、CRISPR/Cas9がRNA制御配列に挿入するINDELsが遺伝子発現に与える影響については研究が進んで来なかった。
成果
  • University of Texas Southwestern Medical Center、Cleveland Clinic Lerner Research InstituteならびにUniversity of Rochester Medical Centerの研究グループは今回、DNA-mRNA-タンパク質の相関を解析し、CRISPR/Cas9ゲノム編集によって一連の遺伝子群にフレームシフト変異を誘導するINDELsを帯びるに至った細胞株HAP1の~50%に、野生型細胞株には出現しないmRNAsやタンパク質が存在することを発見した。
  • 研究グループはこの異常タンパク質が、 'internal ribosomal entry'を促進し、擬似-mRNAをタンパク質コーディング分子へ転換またはエクソン内に存在するスプライシング促進モチーフ (Exonic splicing enhancer: ESE)を破壊してエクソン・スキッピングを誘導するINDELsから誘導されるとした。
  • 研究グループはさらに、ESEの破壊により病因変異エクソンをスキップし、野生型のタンパク質の機能を完全にないまでも十分に回復することを可能にするsgRNAの設計ツール、CRISPinatoR 、を開発・公開した。