1. CRISPR KOに続くデータ非依存性・質量分析 (DIA-MS)によるタンパク質機能解析
[出典] "Combining Rapid Data Independent Acquisition and CRISPR Gene Deletion for Studying Potential Protein Functions: A Case of HMGN1" Mehnert M, Li W, Wu C, Salovska B, Liu Y. Proteomics. 2019-03-22.
  • Yale UniversityのY LiuとInstitute of Molecular Systems Biology (Zurich)のMartin Mehnertらの研究グループは今回、HeLa細胞において、Y. Liuらが2017年にダウン症との相関を報告したHMGN1を標的とするCRISPR/Cas9編集を加え、DIA-MSにより~6,200種類のタンパク質と~82,000種類のペプチド前駆体を定量した。
  • その結果、標的遺伝子のノックアウトを確認し、遺伝子発現レベルが大きく変化したタンパク質147種類を同定し、ヒストンの不活性化をはじめとするHMGN1欠損が細胞過程に与える影響を解析した。
  • また、HeLa細胞クローン間でプロテオームが不均一であることも検出した (参考 2018-06-04 crisp_bio記事 [第2項] ゲノム、プロテオームと表現型から見たHeLa細胞株の多様性)
2. 相同組み換え修復テンプレートの改変とCas9 RNPのナノ粒子による送達を介して、CRISPR-Cas9のゲノム編集効率向上を実現 - 免疫細胞、造血幹細胞・前駆細胞で実証
[出典] Polymer-stabilized Cas9 nanoparticles and modified repair templates increase genome editing efficiency. Nguyen DN, Roth TL [..] Marson A. Nat Biotechnol. 2019-12-09.  (# crisp_bio 2019-12-10追記) < "A Cas9 nanoparticle system with truncated Cas9 target sequences on DNA repair templates enhances genome targeting in diverse human immune cell types" Nguyen DN, Roth TL [..] Marson A. bioRxiv. 2019-03-28. 
 
 UCSFのA. Marsonらは2018年に、ウイルスベクターによる送達に替えて、Ca9-sgRNA複合体RNPと相同組み換え修復(HDR)用テンプレートをエレクトロポレーションすることで、初代T細胞の効率的なゲノム編集法実現していた (Nature, 2018; 2018-07-12 crisp bio記事 "AAVに依存しないCRISPRシステム送達によりT細胞改変を加速"にて紹介)。今回、それに2つの工夫を加えて編集効率を向上させ可用性を拡げた:
  1. 相同組み換え修復(HDR)用テンプレート (ノックイン用DNA配列とその左右の相同アーム)の外側に、RNPが結合するが切断はしない配列 tCTS (truncated Cas9 target sequences: gRNAの標的配列20-bpを16-bpに短縮した配列)をそれぞれ内向きに結合することで [#]、RNP-NLSによるテンプレートの'shuttle'を実現し、長い (1.5-kb) DNAのノックイン効率を向上させた [#: dCas9 RNPでの実験を経て、tCTSを利用することで標的配列切断用と同一のCas9利用を実現]。
  2. RNPをポリグルタミン酸のナノ粒子に内包させた上で送達することで、編集効率の向上と細胞毒性の低減、また、凍結乾燥保存を実現した。
 今回の改訂版による効率的ノックインを、制御性T細胞、γδ-T細胞、B細胞、NK細胞、および、初代培養とiPS細胞から誘導した造血幹細胞・前駆細胞 (HSPCs)における多重編集にて実証した。

3. E. Coli in vivoでのCascadeの動態を可視化し、標的分解の機序を解析
[出典] "Direct visualization of native CRISPR target search in live bacteria reveals Cascade DNA surveillance mechanism" Vink JNA [..] Hohlbein J, Brouns SJJ. bioRxiv. 2019-03-25.
  • E. coli K12において、タイプI CRISPR-CasシステムのエフェクターCascadeのサブユニットCas8eのN末端を光活性化蛍光蛋白質PAmCherry2で標識し、細胞内一粒子追跡を可能とする蛍光顕微鏡法PALM (single-particle tracking Photo-Activated Localization Microscopy: sptPALM) により、可動遺伝要素 (MGE)侵入後のCascadeの動態を解析:MGEに対するCRISPRシステムの干渉はCascadeのコピー数に指数関数的に依存し、MGEの複製とCascadeの探索・破壊との間の競争を示唆;20コピーで50%の阻害レベルを達成;Cas8eのCascadeは核様体において、PAMと相互作用するCas8eを介して~30 msでDNAを探索
4. ファージ療法に対して緑膿菌が耐性を獲得する機構
[出典] "Bacterial biodiversity drives the evolution of CRISPR-based phage resistance in Pseudomonas aeruginosa" Alseth EO [..] Westra ER. bioRxiv. 2019-03-24. > Nature. 2019-10-23.
  • 自然環境での進化の過程でCRISPR-Casシステムを獲得したバクテリアであっても、研究室での富栄養培地では、CRISPR-Casシステムに依らずファージ表面受容体の改変または欠損を介してファージ耐性を示す。著者らは、P. aeruginosaとファージDMS3virの系をモデルとして、他の病原菌との共存がCRISPR-Cas獲得免疫機構の進化をドライブすることを示した。
5. [概説] ティッシュ・エンジニアリングと再生医療研究に有用な化学修飾mRNA (cmRNA)
[出典] CONCISE REVIEW "Concise Review: Application of Chemically Modified mRNA in Cell Fate Conversion and Tissue Engineering" Badieyan ZS, Evans T. Stem Cells Transl Med. 2019-03-19.
  • 化学修飾することで、mRNAの細胞内での安定化、免疫原生の抑制、および挿入変異を阻止可能である。細胞運命制御や組織工学におけるcmRNAsの利用をレビュー (CRISPR技術におけるcmRNA利用は一例紹介)。