#crisp_bio注: 2019-03-31 挿入図 (Fig. 3)の重複を解消
[出典] "A CRISPR/Cas9-based central processing unit to program complex logic computation in human cells" Kim H, Bojar D, Fussenegger M. PNAS 2019-03-28.
  • ヒト細胞は、代謝物、成長因子、最近毒素などの環境からの入力を感知し、発生、分化または免疫といった応答を出力する。こうした出力は、内在する遺伝子回路における特定の遺伝子のスイッチの組み合わせに基づく論理演算に基づいて制御される。
  • こうした内在遺伝子回路に対して、高性能な細胞工場の開発や疾患の制御などを目指した論理回路の開発が試みられ、ヒト細胞で動作する「リコンビナーゼやインレグラーゼを論理回路のマスター制御素子 (中央演算装置: CPU)とする論理回路」がヒト細胞で実現されている (例 Nat Biotechnol, 2017)。
  • また、CRISPR-Cas技術にもとづく論理回路の構築も進んでおり、例えば、dCas9を利用した遺伝子の複合体転写調節もヒト細胞で実現されている (CRISPR関連文献メモ_2016/12/05 [第2項]  互いに直交する誘導可能なdCas9因子群によって複合的転写調節を実現 )。
  • ETH Zürichの研究チームは今回、遺伝子転写を抑制する機能を帯びたCRISPRi (dCas9-KRAB)とtRNA-gRNAを'CPU'とする遺伝子転写ON/OFFスイッチ (原論文Fig. 1から引用した下図左参照)、続いて、それらを組み合わせた一連の論理素子 (原論文Fig. 2から引用した下図右参照)を開発し、HEK293T細胞での動作を確認した (研究チームは、CRISPRiは、CRISPRaよりも代謝負荷が低く,合成遺伝子回路構築には効率的であるとしている)。
Fig. 1 Fig. 2
  • CPU (上図左 A): CPUを構成するdCas9はhCMVプロモータで発現し、gRNAは内在するRNase PならびにZによるプロセッシング後にhU6プロモータで発現し、dCas9-KRABと転写抑制複合体を形成する。このgRNAが入力となる (以下、igRNA)。
  • オペレータと出力 (上図左 B): オペレーターとしてプロモータの下流にigRNAの標的配列の2~4回反復配列を配置し、続いてレポータとなる蛍光タンパク質遺伝子、または、他の素子の制御用rgRNAsを結合
  • OFFスイッチ (上図左 Cの上図): igRNA (IA)が存在するとdCas9-KRABは活性を示しレポータまたはrgRNAの発現を阻害し、IAが存在しないとdCas9-KRABは不活性 (入力(0:1)に出力(1:0)が対応)。
  • ONスイッチ (上図左 Cの下図): igRNA (IA)が存在すると、hU6プロモータとTSSの間にIA結合部位を伴っていたrgRNAの発現が阻害されdCas9-KRABは不活性でレポータ/grRNA発現igRNAが存在しないと、rgRNAが発現しdCas9-KRABが活性となりレポータ/grRNAの発現抑制 (入力 (0:1)に出力 (0:1)が対応)。
  • 研究グループはさらに、dSpcas9-KRABにそれと直交するdSaCas9-KRABを組み合わせた'2コアCPU'を帯びた細胞も作出 (原論文Fig. 3引用下図参照)。Fig. 3

[参考crisp_bio記事] 2019-08-23 BE/Target-AID技術に倣い読み書き可能なDNA"フラッシュメモリドライブ"と論理演算子・遺伝子回路を実現