(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/27)
  • Corresponding authorsRoland Beckmann (U. Munich) ; Ed Hurt (Biochemie-Zentrum der Universität Heidelberg)
  • 真核生物リボソームの60Sサブユニットと40Sサブユニットは、4種類のrRNAsと〜80種類のリボソームタンパク質(ribosomal proteins; RPs)を必要とする複雑な過程を経て合成される。
    • 合成は、核小体(nucleolus)におけるRNAポリメラーゼ1によるrRNA前駆体(酵母では35SrRNA前駆体と呼ばれる)の転写から始まる。
    • 35SrRNA前駆体は、多数のトランス作用因子とリボソーム結合タンパク質とともに転写され、90Sリボソーム前駆体または小サブユニット・プロセソーム(small-subunit processome)と呼ばれる巨体な生体高分子複合体を形成し、この90Sリボソーム前駆体が40Sリボソーム前駆体と60Sリボソーム前駆体へと分割される。 
      [参考]“リボソームの生合成に共役したリボソーム前駆体の品質管理機構”(松尾芳隆, 2014)図1
  • 60S前駆体のクライオ電顕構造が3.08〜6.6 Å分解能で解かれていたところ今回、好熱性糸状菌Chaetomium thermophilum由来の90Sリボソーム前駆体(特に、40Sリボソーム前駆体)のクライオ電顕構造が4〜7.3 Å分解能で解かれて、90Sリボソーム前駆体の構造からリボソーム生合成の全体像が見えてきた。
    • 90Sリボソーム前駆体において、UTP-A、UTP-B、Mpp10-Imp3-Imp4, Bms1-Rcl1およびU3 snoRNPモジュールを同定し、これらが5’-ETS(5′ external transcribed spacer)と部分的にフォールドされた18S rRNAを取り囲んでおり、U3 snoRNPがrRNA前駆体のフォールドとプロセッシンにおいて多重の役割を担っていることを見出した。
    • 新生rRNAは、鋳型のような構造の中でフォールドし、これは、ポリペプチドがシャペロン分子チャンバーの中でタンパク質へとフォールドする機構を思わせた。
    • 40Sリボソーム前駆体が遊離後、90Sリボソーム前駆体の足場がモジュールへと分解され、再利用される。