[出典]  "Cas12a trans-cleavage can be modulated in vitro and is active on ssDNA, dsDNA, and RNA" Fuchs RT, Curcuru JL, Mabuchi M, Yourik P, Robb GB. bioRxiv. 2019-04-08.

 これまで
、Cas12aが標的dsDNA切断とともにssDNAを非選択的にトランス (trans)に切断することは報告されていた。(crisp_bio記事参照*)。Cas12a RNPはcrRNAと相補的なDNA鎖 (標的鎖/TS)に結合し、RuvCドメインによりPAMから遠位の位置で非標的鎖 (NTS)とTSを相次いでcisに切断する。その結果、dsDNAに5'末端がオーバーハングした突出末端をもたらし、PAM遠位のdsDNAはPAM近位のdsDNAから遊離する。Cas12a RNPはdsDNAを切断後もPAM近位のdsDNAに結合し続けていることからヌクレアーゼ活性を維持し、RuvCドメインを介してssDNAを非選択的にトランス切断するとされていた。

 New England Biolabsの研究チームは今回、Cas12a RNPが標的dsDNA切断に際して、先行研究で報告されていたssDNAの非選択的トランス分解に加えて、ssRNAと直鎖dsDNAをトランス分解し、また、環状dsDNAにはトランスでニックを入れることを、in vitro実験で示した:
  • ssDNAの分解は数秒から数分間で完了するところ、dsDNAの分解は数分から数時間を要し、ssRNAの分解もssDNAの分解の10倍以上の時間を要した。
  • トランス分解活性には、標的DNAの組成への依存性はほとんど見られず、gRNA (crRNA)の長さならびにgRNAと標的DNAの組み合わせに依存性を示した。
  • また、トランス分解活性をマグネシウムイオン濃度と塩濃度によって調節可能なことも同定した。塩濃度 < 150 mMでマグネシウムイオン > 2mMの条件下で、Cas12aの活性が最も高くなり、塩濃度が150 mM以上になるとかなりの長時間観察しない限りトランス活性を観察できない。
  • LbaCas12a、AspCas12a、およびFnoCas12aのいずれもトランス活性を示したが、LbaCas12aが最も高いトランス活性を示した。
(*) Cas12aの活性関連crisp_bio記事