2021-03-18 更新2021-03-18 12.53.44 2020-10-28更新の項目1のbioRxiv投稿が、Nature Communication誌の論文として発表されたことを受けて、前述項目1に書誌情報を追加し、また、数値を更新し、Broad Dependency MapとSanger Project Scoreの統合戦略の模式図Figure 1を右図に引用
2020-10-28 更新 その後の拡張の成果と関連データベース2種類へのリンクと書誌情報を追加
  1. 後継成果: 癌型42種類/組織 26種類/細胞株 786908種類にわたる16,82717,486遺伝子を含むデータベースを構築公開 [https://depmap.org/broad-sanger/; https://score.depmap.sanger.ac.uk/downloads]; [出典] "Integrated cross-study datasets of genetic dependencies in cancer" Pacini C [..] Iorio F. (bioRxiv. 2020-05-25) Nat Commun. 2021-03-12. https://doi.org/10.1038/s41467-021-21898-7
  2. 関連データベースCEN‐tools (Context‐specific Essentiality Network‐tools) http://cen-tools.com/ ; [出典] "CEN‐tools: an integrative platform to identify the contexts of essential genes" Sharma S, Dincer C, Weidemüller P, Wright GJ, Petsalaki E. Mol Syst Biol. 2020-10-19
  3. 2020-10-23 Project Scoreデータベース: 癌細胞の遺伝子依存性の評価と治療標的候補の優先順位付けを支援
    2019-04-13 初稿; 2020-10-22 記事タイトル改訂

    [出典] "Agreement between two large pan-cancer CRISPR-Cas9 gene dependency datasets" Dempster JM, Pacini C [..] Iorio F, Tsherniak A. bioRxiv. 2019-04-10. >  Nat Commun. 2019-12-20. [crisp_bio注: 2019-12-21 Nature CommunicationsのFig.1を末尾に引用追加]

    概要
    • Broad InstituteとSanger Instituteは共に、全てのがん細胞株についてその遺伝的依存性 (言い換えると、脆弱性)を明らかにするCancer Dpendency Mapの構築・公開を目的としつつ、CRISPR-Cas9スクリーニングによる解析を、それぞれ独自の実験プロトコルで進めてきた。
    • 今回、両研究所が共同で双方のデータセット[*]を照合し、実験条件やデータ解析手法が多々異なるも、がん細胞株の遺伝子依存性プロファイルが良い一致を示すことを明らかにした。
    • これまでの両研究所での解析に加えて新たなデータ解析と再現実験も行なって、実験条件の違いが引き起こすデータの違い (バッチ効果/batch effect)が主として、試薬ライブラリーとアッセイの期間の2つの実験条件に由来することも見出した (アッセイ期間が長いと遺伝子依存性が強く出る傾向)。
    • 以上から、Broad研とSanger研が互いに独立に進めてきたプール型ゲノムワイドCRISPR-Cas9ドロップアウト・スクリーニングから得られる知見は信頼に値し、がん細胞の脆弱性を対象とする包括的データベースCancer Dependency Map (DepMap)[**]の完成に一歩近づく結果となった。
    両研究所のスクリーニング結果報告関連crisp_bio記事とDepMap Webサイト
    データ解析
    • 両研究所のデータセットに共通な細胞株147種類、遺伝子16,733種類について、CRISPR-Cas9により不活性化される各遺伝子がそれぞれもたらす細胞生存性低下の定量化に基づく遺伝子依存性スコア、および、特定の遺伝子への依存性の細胞間の変動を示す遺伝子依存性プロファイルと、特定の細胞株おける遺伝子依存性プロファイル (細胞株依存性プロファイル)を、2種類のデータセットの間で比較した。
    • 遺伝子依存性スコアのデータは3種類:両研究所がそれぞれDepMapWebサイト**で公開している各細胞株の各遺伝子への依存性データから算出[processed] (生データから依存性データに至るデータ解析パイプラインは両研究所で異なる - 原投稿Figure 1-aにパイプライン比較の模式図あり); sgRNAの中央値から改めて算出 [unprocessed]; 経験的ベイズ法によるバッチ効果修正unprocessed dataに加えた後、算出 [batch-corrected gene scores]
    遺伝子依存性プロファイルの比較
    • 細胞間の共通性:各遺伝子の細胞株間での平均スコアについては、batch-correctedではピアソン相関係数が0.997に達した。Unproessedでは0.818であったが、unprocessedでも、細胞株のほとんどが強い依存性を示す1,031遺伝子 (common dependency genes: CDGs)が両研究所で一致し、Broad研とSanger研それぞれに特有なCDGsは397遺伝子と260遺伝子に止まった。
    • 細胞間での変動:各遺伝子の依存性スコアの細胞間での変動はおおむね小さいが、細胞間で変動が大きい遺伝子依存性49種類 (Strongly Selective Dependencies: SSDs)を選択することができた。
    細胞株依存性プロファイルの比較
    • 各細胞における遺伝子依存性スコアのプロファイルも、batch-correctedでの比較で両データセット間でよく一致した。
    遺伝子依存性バイオマーカの比較
    • unprocessed dataに基づいてSSDsと腫瘍の特徴 (バイオマーカ候補)との相関を解析し、Broad研のデータからは71組、Sanger研のデータからは90組を同定し、そのうち55組が共通であった。RNA-seqのデータに基づくSSDsと遺伝子発現 (バイオマーカ候補)との相関についても、両研究所のデータセットからの解析結果は整合的であった。
    参考図
    • Nature Communications論文Fig. 1-aとFig. 1-b, c, dを下図の左右に引用 (BroadとSangerの実験プロトコル (左)と遺伝子スコア (右)の比較)
    Fig. 1-a Fig. 1 b-d