(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/08/02)
  • Corresponding author: Timothy K. Lu (MIT/Harvard U.)
  • リコンビナーゼを利用して、生細胞において遺伝子制御イベントに応答しかつ記録する有限状態機械(有限オートマトン)に相当する“recombinase-based state machines(RSMs)”を構築。
    • RSMsは、RSMに対する入力とその順に応じて特定の状態に至る。
    • RSMsにおいて状態を記録するDNAのレジスター(register)は、異なるリコンビナーゼが認識するサイトを重複およびまたは入れ子に配置した合成配列を有するプラスミドである。抗生物質、糖、低分子などの入力に応じて、複数のリコンビナーゼが削除あるいは逆位を引き起こすことで、DNAレジスターに状態が非可逆的に記録され、DNAレジスターのシーケンシングからインプットの種類と順を遡及解析する。続いて、リコンビナーゼ結合サイトのアレイに遺伝子および遺伝子制御因子を組み込んで、記録に加えて、遺伝子発現制御を可能にした。
    • 具体的に、2入力5状態のRSMsと3入力16状態のRSMsを構築。
    • 目的の機能を果たす遺伝子回路の設計を支援するGRSM (gene-regulatory RSM)データべースを、MATLAB R2013bを利用して構築。GRSMデータベースは、174,264種類の遺伝子制御プログラムに対応する5,192,819種類のレジスターが登録されており、求める遺伝子制御プログラムからレジスター群を探索可能とする。
    • DNAメモリーと環境に対する細胞応答の組み合わせは、合成生物学の有用なツールボックスである。
    • [参考] 筆頭著者N. Roquet自身による解説ブログ:“Recombinase-based State Machines Enable Order-dependent Logic in vivo” AddGene’s Blog July 28, 2016 10:30:00 AM.
  • 関連[展望] “SYNTHETIC BIOLOGY: On the record with E. coli DNA”
    • Corresponding author: Tom Ellis (Imperial College London)
    • Roquet論文とShipman論文を紹介し、McKenna論文にも言及
  • 関連[論文] Shipmanら: “Molecular recordings by directed CRISPR spacer acquisition”
    • CRISPR/Casシステムの獲得免疫機構を利用:エレクトロポレーションに拠って合成オリゴヌクレオチドをプロトスペーサーとしてCRISPRリピートへ挿入 ー(プロトスペーサー獲得の時系列がCRISPRアレイにおける物理的位置の順に反映される)→ CRISPR遺伝子座全体のシーケンシングによりプロセスを遡求解析
    • 5種類のオリゴヌクレオチド・プロトスペーサー3セット使用し、また、Cas1とCas2を改変して順方向と逆方向の挿入を実現して、記憶容量を拡大
  • 関連[論文] McKennaら: “Whole-organism lineage tracing by combinatorial and cumulative genome editing”(GESTALT法)”
    • CRISPRの標的となるDNAカセットをゲノムに挿入しておき、そこに蓄積されていく変異から細胞系譜を追跡可能に。