(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/08/09)
  1. [論文] CRISPR interference (CRISPRi) によってシアノバクテリアの代謝を制御
    • Corresponding author: Brian F. Pfleger (University of Wisconsin-Madison,)
    • シアノバクテリアSynechococcus sp. PCC7002株にCRISPRi技術を適用し、可逆的でチューニング可能な遺伝子活性の制御を実現。
    • 外来レポーター蛍光タンパク質YFP、ならびに内在性フィコビリソームカルボキシソーム合成の抑制を制御可能なことを示した。抑制は、プロモーターの強度と翻訳レベルのバランスをとって最適化。二酸化炭素固定に必須の内在カルボキシソーム合成の抑制により条件付き栄養要求株の作出に成功。内在の窒素同化遺伝子の抑制によって中心炭素代謝系における炭素フラックスの上昇を実現し乳酸産生量が2倍に。
  2. [論文] CRISPRスクリーニングは癌必須遺伝子の網羅的スクリーニングに有効であるが、ゲノム増幅領域において偽陽性が多々発生
    • Corresponding author: Michael R. Schlabach (Novartis Institutes for Biomedical Research)
    • 5種類の癌細胞株(SF268; MKN45; DLD1; RKO; HT1080)を対象として2,700遺伝子を標的とするCRISPRとRNAiによる機能喪失スクリーニングを比較し、CRISPRはRNAiよりも多くの癌細胞致死遺伝子を同定し、偽陽性は少なかった。CRISPRによるドロップアウト・スクリーニングの結果、癌細胞必須遺伝子の種類の数が癌細胞株によって異なったが、409種類の遺伝子が少なくとも1種類の癌細胞株において必須と判定された。
    • しかし、異数性のSF268細胞株とMKN45細胞株において、CRISPRは、ゲノム上で増幅が高頻度で起きた領域の遺伝子については、発現しない遺伝子でも癌細胞致死遺伝子と偽陽性の判定をする傾向を示した。
    • また、CRISPRによるタイリング・スクリーニングから、sgRNAの標的として通常選択される遺伝子の最も5’末端よりのコーディング領域ではなく、その遺伝子において最も保存性の高いドメインを標的とするsgRNAの方が安定した致死性表現型を示し、ドロップアウト・スクリーニングの検出能を最大化することを見出した。
  3. [論文] ゲノムのコピー数がCRISPR/Cas9の遺伝子に依存しない細胞応答を支配する
    • Corresponding authors: Aviad Tsherniak (Broad Inst.); William C. Hahn (Dana-Farber Cancer Inst.)
    • 33種類の癌細胞株を対象とするゲノムワイドでの機能喪失スクリーニングから、遺伝子のコピー数の増加と、ゲノム編集後の細胞生存能の減少との間に強い相関があることを見出した。
    • CRISPR/Cas9は、多コピー領域では、発現する遺伝子と発現しない遺伝子の双方、また、遺伝子間領域を標的とするCRISPR/Cas9が、細胞周期のG2期での停止を誘導することで細胞増殖を強く抑制した。この細胞応答は、遺伝子座の種類ではなく、標的遺伝子座の数に依存していた。
    • 今回得られた知見は、CRISPR/Cas9機能喪失スクリーニングの結果の解釈に影響を与え、また、ゲノム上で増幅が起きている領域を標的とする新たな癌療法も示唆している。