(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/08/17)
  • Corresponding authors: 津田 誠;井上和秀(九州大学)
  • 末梢神経損傷(peripheral nerve injury, PNI)に伴う神経障害性過敏症には、細胞外ATPによる脊髄内のプリン受容体の活性化が不可欠である。今回、PNIを受けて、小胞体型ヌクレオチドトランスポーター(vesicular nucleotide transporter, VNUT)の発現が上昇することが明らかにされた。
    • PNIを受けて脊髄内の細胞外ATP量([ATP]e)が増加し、この増加はエキソサイトーシス阻害剤に拠って抑制される。
    • VNUTを欠失したマウスは、PINの誘導による[ATP]e増加が起こらず、過敏症も軽減された。
    • この表現型は、脊髄後角(spinal dorsal horn, SDH)神経細胞に特異的にVNUTを欠失したマウスにおいて再現された。しかし、一次感覚ニューロン、ミクログリアまたはアストロサイトにおいてVNUTを欠失したマウスでは再現されなかった。
    • 一方で、VNUTを欠損させたSDH神経細胞でVNUTを異所性発現させると、PNIに誘導される[ATP]eと疼痛が再発する。
  • 神経障害性疼痛の発生機構の鍵をVNUTを介したSDH神経細胞からの細胞外へのATP分泌が握っていることが明らかになった。今回の成果は、細胞外APT分泌が関与する疾患発症機構の解明研究を前進させる。
  • [情報拠点注] 和文解説:井上和秀・津田 誠. “神経障害性疼痛におけるATP受容体とその役割” Anesthesia 21 Century 2010;12(1-36):2232-2238.