(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/08/19)
  • Corresponding author: Neil H. Shubin (University of Chicago)
  • 四足動物の肢が魚類のひれからどのように進化したのか。四足動物の指の祖先についても議論は尽きない。肢とひれの遠位骨格(distal skeletons)が、構造上も、発生的にも、組織学的にも、異なっており、また、魚類ひれ骨格(ひれすじ/fin rays)の発生をもたらす細胞過程についても分子過程についてもデータが不足しているからである。 
    [注] 骨形成には、軟骨内骨 (Endochondral born, EB)化と膜性骨 (dermal bone, DB)化の2種類の過程が存在する。AutopodはEBであり、ひれすじはDBである。
  • マウスの手首と指(自脚部/autopod)の発生には、ホメオティック遺伝子群のHoxa13 とHoxd13が、必須であることが明らかにされている。シカゴ大学の中村哲也らは今回、ゼブラフィッシュにおいてautopod発生に必須の重複遺伝子hoxa13a /hoxa13b とhoxd13aならびにエンハンサーの機能を、CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集ならびに胚の領域と種々の骨組織の対応関係の解析(原基分布図の作成)によって明らかにし、“指”と“ひれ”の骨格の発生過程を比較した。
    [注] ゲノム重複により発生遺伝学的解析が進まなかった障害を、CRISPR/Cas9で乗り越えることが可能になった。
  • マウスの指は遠位軟骨内骨で構成されている。遺伝子群hox13 をノックアウトしたゼブラフィッシュ(a13a-/-a13b-/-)では、膜性骨のfin raysが極端に短くなる一方で、“指”に対応する遠位軟骨内骨の数が増加した。
  • マウスの指とゼブラフィッシュのひれは形態から見ると相同器官ではないが、発生過程には相同性が見られ、また、デボン紀に、形態的にひれを失って肢を獲得した四足動物が誕生した進化の分子機構の一端を示唆する結果が得られた。
  • [注 ] 責任著者のShubinは、四肢動物の肢に近い胸ひれを有する*)ティクターリク(参考図参照)の発見者の一人 である。 
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  • *) Shubin NH, Daeschler EB & Jenkins FA Jr. “The pectoral fin of Tiktaalik roseae and the origin of the tetrapod limb” 
    Nature. 2006 Apr 6;440(7085):764-71.
  • [注] 。Nature誌のEDITORIALと NEWSは“CRISPRのEvo-devoへの展開”という観点で取り上げ、古代生物や絶滅危惧種のDNAを現生物種へと移植する話題にも触れている。