2020-09-29 Tregを標的としていないが光免疫療法が承認されたという観点から、楽天メディカルジャパンのプレスリリース2020-09-25の「医薬品・医療機器によるがん局所治療 アキャルックス®点滴静注250㎎及び、BioBlade®レーザシステム 国内での製造販売承認取得のお知らせ」一部引用を追加
  • 米国NCI/NIHの小林久隆らが開発を進めてきたいわる光免疫療法をベースとした一般名「セツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) / 以下、アキャルックス®」の療法が、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果としてその製造販売承認を、世界各国に先駆けて厚生労働省から取得した。
  • 本承認は、海外の局所再発頭頸部癌を対象とした第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験 (39例)、並びに国内第Ⅰ相臨床試験 (3例) の結果に基づいており、第III相試験は海外にて参加者募集中 (参考の[治験登録]参照)
  • この療法と組み合わせる医療用レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」(以下、BioBlade®) についても、9月2日に製造販売承認を取得していた。
  • 同社はまたこの機会に、同社の光免疫療法を「イルミノックス™プラットフォーム」と呼ぶことにした。
 参考
  • [治験登録] 第1/2試験 NCT02422979   (Completed) Study of RM-1929 and Photoimmunotherapy in Patients With Recurrent Head and Neck Cancer; 第3相試験 NCT03769506 Phase 3 (Recruiting) Photoimmunotherapy (PIT) Study in Recurrent Head/Neck Cancer for Patients Who Have Failed at Least Two Lines of Therapy; 第1b/2相試験 NCT04305795 (Not yet recruiting) Open-label Study using ASP-1929 Photoimmunotherapy in Combination with anti-PD1 Therapy in patients with recurrent or metastatic head and neck and squamous cell cancer or advanced cutaneous squamous cell carcinoma.
  • [近赤外光による癌光免疫療法のレビュー] "Near-Infrared Photoimmunotherapy of Cancer" Kobayashi H, Choyke PL. Acc Chem Res. 2019 Aug 20;52(8):2332-2339. [PMC6704485 ]
2016-08-20 光免疫療法については, 創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチにて初稿
(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/08/20)
  • Corresponding author: 小林久隆(National Cancer Institute, NIH)
  • 画期的な効果が見られる癌免疫療法として現在、免疫を抑制する細胞とエフェクター細胞のバランスを調節することで抗腫瘍免疫反応を亢進する手法に注目が集まっている。この手法が及ぶ領域を全身から癌組織へと限定することができれば、過剰な自己免疫応答を回避することが可能になり、理想的である。
  • 小林らは先行研究で、癌細胞特異的な抗体と近赤外光 (NIR: 波長700nm)に応答して発熱するNIR吸収性フタロシアニン色素IR700を結合し、近赤外光を照射することで、細胞株および癌マウスモデルに対して癌細胞を壊死させる光免疫療法、near-infrared photoimmunotherapy (NIR-PIT) 、を確立していた。研究チームは今回、近赤外光を利用して癌組織特異的に制御T細胞を壊死させることに成功した。
    • CD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞(Tregs)は、周知のように、癌の免疫回避を可能にする免疫抑制細胞であり、最新免疫療法の標的とされている。研究チームは今回、抗体や補体の細胞障害性を回避するためにFc領域を持たない抗CD25抗体とIR700を結合したNIR-PIT(以下、抗CD25NIR-PIT)を試みた。
    • 抗CD25NIR-PITは、CD8 T細胞とナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化し、抗原提示細胞を増加させて、抗腫瘍免疫応答を局所的に回復させ、近赤外光を照射した癌組織を縮減した。
    • また、モデルマウスの左右の癌を利用した実験により、近赤外光を照射しなかった側の癌組織も縮減することを見出した。抗CD25NIR-PITによって局所的に活性化されたCD8 T細胞とNK細胞は全身に広がり、他の部位に存在する癌組織も縮減する。
    • 抗CD25NIR-PITは、腫瘍内および全身にサイトカインストーム(cytokine storm)を誘導するが、幸いなことに、近赤外光照射後、1日以内にサイトカインストームはおさまる。一方で、抗CD25NIR-PITによるTregs抑制効果もまた一過性であり、癌再発を監視し治療を繰り返す必要がある。また、抗CD25NIR-PITは、Tregsが主たる免疫回避機構である癌には効果的であるが、その他の免疫回避機構を主とする癌に対する効果は限定的である。
  • 現在、再発性頭頸部癌を対象として、セツキシマブ-IR700によるNIR-PITの第1相試験が進んでいる(NCT02422979)。抗CD25抗体にはbasiliximabdaclizumabなどFDA認可薬剤が存在するため抗CD25NIR-PITの臨床試験へのハードルは低い。