2020-09-13 Journal of Molecular Cell Biologyに採録された第1項に、書誌情報を追加
2019-04-22 初稿

1. 
GNL-Scorer: 機械学習と特徴表現によるCRISPR活性予測モデルの改良
[出典] "GNL-Scorer: a generalized model for predicting CRISPR on-target activity by machine learning and featurization" Wang J [..] Cheng L, Luo Y. J Mol Cell Biol. 2020-01-03.
[
"CRISPR-GNL: an improved model for predicting CRISPR activity by machine learning and featurization" Wang J [..] Luo Y. bioRxiv. 2019-04-11]
# crisp_bio注: bioRixv投稿に準拠したテキストの一部をJMCB論文に基づいて改訂しFigure 1- A/Dを引用.
  • BGI Education Centerを中心とする研究グループは、13種類の公開データセットを8種類の回帰モデルで再解析・評価し、生物種そしてまたはデータセットにわたって適用可能な一般化モデルが存在しないことから、8,101 19,797 sgRNAsの正規化編集活性と2,488 200の特徴をもとに、Bayesian Ridge回帰モデルに基づく一般化スコア (a generalization score, GNL)を定義し、GNLモデルがオンターゲット活性予測について、これまでの予測プログラムに優ることを示した。
  • GNL-Scorerのワークフローと他のモデルとの比較について、それぞれ、Figure 1-Aと-Dを引用した左右の下図参照:
    2020-09-13 16.53.31  2020-09-13 17.03.37
2. これまで外来HR/NHEJシステムに依存していたE. coliのゲノム編集を、E. coli内在の末端結合 (E. coli native end-joining, ENEJ)システムで実現
[出典] "CRISPR-Cas9-assisted native end-joining editing offers a simple strategy for efficient genetic engineering in Escherichia coli" Huang C [..] Huoa YX. bioRxiv. 2019-04-11.
  • E. coliにはNHEJシステムが存在せずHRを介したDSB修復は極めて非効率である。Beijing Institute of Technologyを中心とする中国研究グループは、リガーゼ-D-とKu-に依存しない微弱でこれまで無視されていたE. coliの末端結合機構を、CRISPR-Cas9によるDSBと組み合わせることで大規模なゲノム編集に利用可能なことを示し、CRISPR-Cas9-assisted native end-joining editing (CNEE)法と称した。
  • CNEE法により83-kbまでのゲノム配列の迅速かつ高効率でノックアウトを実現し、HRとNHEJが非効率なバクテリアのゲノム編集全般に展開可能とした。
3. CRISPR-dCas9を熱でリモートコントロールすることで転写を制御
[出典] "Heat-triggered remote control of CRISPR-dCas9 for tunable transcriptional modulation" Gamboa L, Phung EV, Li H, Meyers JP,  Kwong GA. bioRxiv. 2019-04-12.
  • Georgia Institute of Technology & Emory Universityの研究グループは先行研究で、哺乳類細胞において標的遺伝子の発現の熱制御を実現する熱遺伝子スイッチ (thermal gene switches: TGS)を熱ショックタンパク質HSP70B’ (HSPA6) に基づいて開発していた (ACS Synth Biol, 2018)。TGSはヒト体温ではオフ状態を維持する。今回、TGSとdCas9システム (dCas9-KRAB; dCas9-VP64)からなるコンストラクトをレンチウイルスでHEK293T細胞に導入し熱による遺伝子転写制御を実証した。
  • 次にマドリゲル膜に、近赤外光を吸収し熱に変換する金ナノロッド (AuNRs)とコンストラクトを埋め込んだ組織ファントムをヌードマウスに皮下移植し、近赤外光レーザー照射による遺伝子転写調節を実証した。
4. CRISPR/Cas9で編集したヒト長期造血幹細胞 (LT-HSCs)の機能プロファイリング
[出典] "Functional Profiling of Single CRISPR/Cas9-Edited Human Long-Term Hematopoietic Stem Cells" Wagenblast E [..] Dick JE, Lechman ER. bioRxiv. 2019-04-15.
  • LT-HSCsはHCSsの中で唯一、移植後に恒久的に造血系を再生可能な細胞集団であり、血液疾患の再生医療の鍵であり、一方で、その変異は血液疾患の病因となる。LT-HSCsはCD34陽性HSCsの0.1-1%であることから、トロントのPrincess Margaret Cancer Centreを中心とする研究グループは今回、不均一なCD34陽性HSCsバルクの解析に替えて、臍帯血からLT-HSCs, ST-HSCsおよびMEPsの細胞亜集団をソーティングし、極めて純度の高いLT-HSCsを対象とするCRISPR/Cas9によるNHEJまたはHDRを介した遺伝子編集を実現した。
  • 1細胞からの分化をin vitroで追跡し、'near-clonal'移植マウスでの造血系再構築を長期間追跡した。実証実験では、LT-HSCsにおけるGATA1 short isoformの内在プロモーターによる発現が 巨核球細胞を増加させることを初めて同定し、ダウン症発症機構に関する知見を得た。
5.   CRISPR/Cas9により、疾病媒介昆虫ネッタイイエカに遺伝する生殖細胞変異を生成する
[出典] "Methods for the generation of heritable germline mutations in the disease vector Culex quinquefasciatus using CRISPR/Cas9" Li M, Li T [..] Akbari OS. bioRxiv. 2019-04-16.
  • 疾病を媒介する他の蚊に比べてゲノム編集が遅れていたネッタイイエカのゲノム編集にCRISPR-Cas9技術を最適化し、編集を加えて胚の生存率と生殖細胞系列での変異誘発率をこれまでになく向上し、初めてwhite遺伝子マーカを解析し、ネッタイイエカ機能ゲノミクスの道を開いた。