[出典] "A Single-Cell Atlas of the Tumor and Immune Ecosystem of Human Breast Cancer" Wagner J [..] Rodríguez Martínez M, Weber WP, Bodenmiller B. Cell. 2019-04-10.
  • 乳がんは患者間および組織内で不均質な疾患であることが知られている。一般に、腫瘍細胞と腫瘍細胞に随伴する正常細胞が癌の進行と治療への応答性を決定づけるエコシステムを形成している。
  • 乳癌の複雑なエコシステムの様相を明らかにすることを目的として、University of Zurich, BM Research Zurich, University of BaselやPatients’ Tumor Bank of Hope BiobankとInstitute of Pathology at Josefshausなどのスイス・ドイツの研究グループは今回、マスサイトメトリー (Mass cytometry) により、全ての臨床サブタイプをカバーする144例の乳がん組織サンプルと腫瘍組織に隣接する非腫瘍組織サンプル46例および乳がん除去後乳房形成の4例を対象とする一細胞プロテオーム解析を行なった。
  • 腫瘍特異的抗体と免疫細胞特異的抗体を利用して、2,600万個の細胞における73種類のタンパク質の発現を測定・解析し、細胞型の同定と表現型に基づくクラスタリングを経て、腫瘍細胞と免疫細胞の相関を解析し、さらに臨床像と対照した。
  • 腫瘍組織が、表現型の異常と優性な表現型を含むさまざまな腫瘍細胞で形成され、その組成がサンプル間で多様であることを確認した。例えば、細胞型が最も多様であるとされていた悪性度が最も高い腫瘍組織の殆どが1種類の細胞型からなりたつ一方で、多くの腫瘍組織に多様な細胞型が見出された。
  • 悪性度の高いER- ER+ 腫瘍において、高頻度で、PD-L1陽性の腫瘍に随伴するマクロファージ( tumor-associated macrophage: TAM)と疲弊したT細胞を見出した。
  • こうして、免疫抑制ならびに予後不良と相関するエコシステムの特徴を同定していくことで、エコシステムの特徴に基づいた患者の層別化ひいては個別化医療が可能となるとした。