(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/08/29)CRISPR関連文献メモ_2016/08/29

  • Corresponding author: Thoru Pederson (University of Massachusetts Medical School)
  • 研究チームはこれまでにdCas9-gRNAを利用して染色体の構造と動態の可視化を実現してきた(*)が、今回は、dCas9とsgRNAを蛍光標識し、U2OS細胞の核内での、dCas9-gRNA形成から標的認識そして標的部位切断に至る動態を直接観察した。
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  • dCas9はmCherryで標識し、sgRNAは、3’末端にRNAアプタマー“Broccoli”を結合し、アプタマーに結合すると発光する細胞膜透過性低分子で標識し、興味深い結果を得た(詳細は参考図 “Multicolor labeling system for CRISPR nuclear dynamics.”参照)。標的は、3番染色体のサブテロメア領域の反復配列とした。
    • dCas9とsgRNAは共発現すると標的に共局在化したが、dCas9が発現していない条件ではgRNAは検出されなくなる。すなわち、dCas9が存在しないとgRNAは極めて不安定になる。一方で、gRNAに対してdCas9を過剰に発現させると、dCas9は核小体に蓄積される。CRISPR/Casシステムによるゲノム編集には、Cas9とgRNAの化学量論比に留意する必要がある。
    • 蛍光退色後の蛍光回復実験によって、dCas9-sgRNA複合体が標的に結合する動態も観察した。複合体は標的に、意外にも、3時間以上止まっている。この滞留時間は、gRNAシード配列に1塩基のミスマッチが生じると2分未満に大幅に短縮され、結合時間と切断活性が相関する。
    • 今後、1コピーの標的を対象とする実験を進める。

論文→Hanhui Ma et al. “CRISPR-Cas9 nuclear dynamics and target recognition in living cells.” J. Cell Biol. Published online 2016 August 22.