1. [論文] CRISPRによるゲノムワイド遺伝子スクリーンによってトキソプラズマの必須遺伝子を同定
    • Corresponding author: Sebastian Lourido (Whitehead Institute for Biomedical Research)
    • アピコンプレックス門(Apicomplexa)は、マラリア、バベシア症、クリプトスポリジウム症およびトキソプラズマ症を引き起こす寄生性原虫の分類群である。今回、アピコンプレックス門の原虫として初めて、Toxoplasma gondii のゲノムワイドでの遺伝子スクリーンがCRISPR技術によって実現され、ヒト細胞内での生存に必須であり、マラリア原虫(Plasmodium )も含まれるアピコンプレックス門において保存されている遺伝子が同定された。
      • T. gondii の遺伝子解析には、RNAi、ランダム変異誘発、そして遺伝的交雑のいずれも有効ではなかった。また、CRISPR/Cas9もCas9のT. gondii に対する毒性ゆえに有効なツールではなかった。研究チームは今回、内在RNAsにより意図しないCas9活性が生じないようにデコイとなるsgRNAとCas9のコンストラクトを送達することで、Cas9を恒常的に発現させつつT. gondii の損傷を抑制し、sgRNAのプールを利用して、8,158遺伝子のノックアウトを実現した。その中から、ヒト細胞感染時に、アピコンプレックス門に共通の必須遺伝子〜200種類を同定した。
      • 必須遺伝子の一つは、分泌小胞に局在し宿主細胞への侵入に必須のタンパク質であり、研究チームはclaudin-like apicomplexan microneme protein (CLAMP)と命名した。
      • P. falciparum のCLAMP相同遺伝子をテトラサイクリンシステムを利用してノックダウンすると、P. falciparum の無性生殖サイクルが阻害された。マラリア原虫のゲノムはATリッチであり、さらに、DSBの非相同末端結合(NHEJ)機構を持たないために標的ごとに修復テンプレートを用意する必要があることから、CRISPR/Cas9によるゲノムワイド遺伝子スクリーンが困難である。したがって、T. gondiiは、マラリア原虫のモデルとしても有用である。
  2. [論文] 脱メチル化によって標的遺伝子を特異的にin vivo 活性化するCRISPR/Cas9ツールボックスを開発
    • Corresponding author: 畑田日出穂(群馬大学)
    • 遺伝子発現とGFP可視化におけるシグナル増幅法として開発されていたSunTag法に準拠し、dCas9にVP64に替えて、dCas9と脱メチル化を誘導するメチル化シトシンヒドロキシラーゼTET1ten-eleven (TET) 1 hydroxylase)の触媒ドメインを多重に結合することで、特定の遺伝子座を効率的に脱メチル化する新手法を確立した [著者らによるライフサイエンス新着論文レビュー投稿の図2引用下図参照]。2020-03-28 21.30.58
      • SunTagは抗体融合タンパク質を多重に結合することが可能なペプチドアレイである。オリジナルのSunTagは、GCN4ペプチドを5アミノ酸のリンカーで24コピーまで結合可能とする構成であった。今回、抗GCN4 scFvを融合したTET1による脱メチル化に向けてSunTagを最適化した。すなわち、リンカーの長さを22アミノ酸へと変更した。
      • 得られた脱メチル化の効率は、テストした9つの遺伝子座のうち7つについて50%を超え、さらにそのうち4つについては90%を超えた。
      • ES細胞、癌細胞株および初代神経前駆細胞、ならびにマウス胎仔in vivo において、新手法によって転写調節領域に位置するCpGsを脱メチル化することで、関連遺伝子の活性の上方制御(1.7〜50倍)を実現した。
    • [情報拠点注] dCas9を利用した遺伝子発現活性化に関するブログ記事:CRISPR関連文献メモ_2016/05/25
  3. [論文] RNAsの並列シーケンシングとゲノム編集を利用したヒト細胞を対象とする逆遺伝学
    • Corresponding author: Sebastian MB Nijman (University of Oxford)
    • シーケンシングの重複度を浅くした極めて多重なRNAシーケンシングに基づくフェノタイプ・プロファイリング法を確立
    • “near-haploid”HAP1細胞のチロシンキナーゼをCRISPR/Cas9によってノックアウトした変異細胞(以下、KO HAP1)64種類を対象として、フェノタイピング。
    • 外部からの70種類の刺激(摂動)に対するKO HAP1のトランスクリプトーム変化から、シグナル伝達の変化の程度が明らかになり、遺伝子とパスウエイの関連づけが可能に。