(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/09/10)
  • Corresponding author: Mathias Uhlén (KTH Royal Institute of Technology)
  • 抗体を使った実験データの品質と一貫性に欠ける問題(*)を解決することを目的とした抗体バリデーションのガイドラインが、ad hoc International Working Group for Antibody Validation (IWGAV)(**)から発表された。 
    (*) 参考記事:創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2015/12/03 抗体は、最も広く使われている試薬の一つであるが、最も頭痛の種になる試薬の一つでもある。 
    (**) IWGAVは、The Human Protein Atlasを率いているMathias Uhlénが主導して立ち上げた委員会である。
  • 抗体を使ったアッセイでは、ウエスタンブロット、免疫組織化学、ELISAなどのアプリケーション***によってサンプルの処理方法が異なるため、アプリケーションを意識した上で、バリデーション手法の5つの柱(pillar)を提唱。また、同一タンパク質であっても細胞や組織によって抗体の反応が異なる(コンテクスト依存)ことにも注意を喚起:*** 以下の括弧内はアプリケーションの略号:WB, western blot; IHC, immunohistochemistry; ICC, immunocytochemistry, including immunofluorescence microscopy; FS, flow sorting and analysis of cells; SA, sandwich assays, including ELISA; IP, immunoprecipitation; ChIP, chromatin immunoprecipitation; and RP, reverse-phase protein arrays.
    1. CRISPR技術による遺伝子ノックアウトまたはRNAiによる遺伝子ノックダウン(WB, IHC, ICC, FS, SA, IP/ ChIP, RP)
    2. 質量分析のように抗体を使用しない手法との組み合わせ(WB, IHC, ICC, FS, SA, RP)
    3. 同一の標的に対して互いに独立な(エピトープを共有しない)複数の抗体を使用(WB, IHC, ICC, FS, SA, IP/ ChIP, RP)
    4. アフィニティータグで標識したタンパク質の発現測定(WB, IHC, ICC, FS)
    5. 免疫捕獲と質量分析との組み合わせ(IP/ChIP)
    6. 5本の柱の少なくとも1つの柱を実施することが必須であり、さらに、複数の柱を組み合わせることが望ましい。
  • 論文上で、実験に使用された抗体を特定する仕組みも標準化し、利用者と提供者に普及することが必要。例えば、カタログ番号とロット番号に加えてResource Identification InitiativeのResearch Resource Identifiers (RRIDs)の利用(https://scicrunch.org/resources/)そしてあるいは抗体の配列。
  • 抗体の提供者へ:5つの柱の少なくとも一つの柱に属するバリデーションを、できる限り多くの細胞種で実施し、その実験条件の詳細を開示する。バリデーションはロットごとに実施する。抗体にはカタログ番号とロット番号にさらにRRIDsを付与する。 
    [情報拠点注] バリデーションを促進する提供者も出始めている。
  • 抗体由来のデータの品質向上に向けて、学術雑誌ならびにNIHなどの研究資金提供機関は実験研究に使用した抗体の特定に必要な情報と実験条件を明らかにすることを求めていく。