(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/09/19)
  • Corresponding authors: 新井一也(ORGANOGENIX(*));江口傑徳(岡山大学) 
    (*) (旧)SCIVAXライフサイエンス株式会社
  • 上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition, EMT)は腫瘍細胞の出芽と転移に関与する現象である。研究チームは今回、上皮間葉転換を阻害する低分子を、新たな3次元ハイスループットスクリーニング法によって、同定した。
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    • 樹脂フィルムに細胞の足場となるグリッド状の微細構造を加工したナノカルチャープレート(NanoCulture Plate, NCP)に橋下A549肺癌細胞が遊走・凝集し7日間でスフェロイド(細胞の塊)を形成した。
    • EMTを誘導する因子の一つであるTGF-βによって、細胞間接着が失われてスフェロイド形成が抑制されることを観察。また、EMTに対応する遺伝子発現パターンの変化が起こることも確認。低酸素プローブHypoxia Probe、HP)を利用して、スフェロイドの内部は極めて低酸素状態になるが、スフェロイドから出芽し遊走した細胞の酸素圧は正常であった。
    • TGF-βの効果は、TGF-β受容体1(TGFβR1)阻害剤SB431542によって抑制された。このスフェロイドEMT阻害(spheroid EMT inhibitory, SEMTIN)をHPプローブの蛍光強度から定量化し、EMTを阻害する低分子スクリーンの指標として、souyaku_icon_32[PDIS]制御拠点の東京大学創薬機構から提供された1,330種類の化合物ライブラリーをスクリーンした。
    • SEMTIN活性が閾値以上である低分子9種類を同定し、そのうち2種類(SB-525334とSU9516)が、用量依存のSEMTINを示した。SB-525334は既知のTGFβR1阻害剤であり、SU9516は細胞周期調節に関わるCDK2の阻害剤であったが、今回、SU9516がEMT阻害活性も有することを見出した。SB431542、SB-525334ならびにSU9516のIC50は、それぞれ、2.38 μM、0.31 μMおよび1.21 μMであった。