(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/09/19)
  1. [レビュー] CRISPR/Cas9技術の血液疾患への応用
    • Corresponding author: Nami McCarty (U. Texas-Health Science Centre at Houston)
    • CRISPR/Cas9技術の発展をたどった後に血液疾患ごとレビュー
      • 非癌性血液疾患:βサラセミア;鎌状赤血球症;ファンコニ貧血;先天性赤芽球癆(Diamond Blackfan貧血);血小板減少症;血友病;その他
      • 悪性血液疾患:リンパ腫;骨髄腫;白血病
      • 二次疾患:慢性肉芽腫症;HIV感染;EBウイルス感染;マラリア;リーシュマニア症
    • CRISPR/Cas9技術の課題:CRISPR/Cas9の送達法/細胞毒性/HDRの効率;オフターゲット作用;ノックアウトとノックダウンの選択;ヒトへの応用;生命倫理
  2. [論文] 仮性狂犬病ウイルス(豚ヘルペスウイルス1型)を標的としたCRISPR/Cas9システム
    • Corresponding author: Xue-Hui Cai (Harbin Veterinary Research Institute)
    • 中国では現在、仮性狂犬病ウイルス(pseudorabies virus, PRV)の変異型のアウトブレイクが起きている。この変異型は遺伝型II PRVに属し、これまでのBartha-K61ワクチンが奏功しない。研究チームは今マウスにおいて、PRVゲノムをCRISPR/Cas9で編集し3遺伝子(gE/gI/TK)を不活性化したHeN1 PRV株が、親株のPRVのチャレンジに対して免疫応答を誘導することを見出した。
  3. [レビュー] CRISPR/Casシステムの存在と進化およびその応用
    • Corresponding authors: Haihong Hao; Zonghui Yuan (華中農業大学)
    • CRISPR/Cas研究の歴史;侵入DNAに対する応答;CRISPR/Casシステムの分類;獲得免疫応答を超えた機能;CRISPRシステムとその調節;CRISPRによる遺伝子制御と病原性;CRISPR/Casによるゲノム進化;応用(ゲノム工学;疾患研究;遺伝子治療;エピゲノム改変);将来展望
  4. [レビュー] 植物、動物および微生物におけるCRISPR/Cas9の活性を比較する
    • Corresponding author: Stefan Schillberg(Fraunhofer IME)
    • CRISPR/Cas9によるゲノム編集は、標的サイト、sgRNA、エンドヌクレアーゼ、dsDNA切断(DSB)のタイプ、内在するDNA修復パスウエイなどの様々な要因に依存し、生物種、組織、および細胞ごとに、多様な結果をもたらす。
    • CRISPR/Cas9のゲノム編集の傾向
      • 植物:DSB修復はNHEJが中心;NHEJの効率は少なくとも80%;変異の多くは10-bp以下の削除か1-bpの挿入 (A/T);HDRによる挿入頻度は〜0.2-5.5 %;オフターゲット作用は稀
      • 動物:DSB修復はNHEJが中心;NHEJの効率は少なくとも90%;変異の多くは40-bp以下の削除;HDRによる挿入頻度は〜5-20 %;オフターゲット作用は稀であるが、がん細胞では高い
      • S. cerevisiae と熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum):DSB修復はHDRが中心;HDRの効率は〜100 %;オフターゲット作用非検出
      • 藻類とS. cerevisiae 以外の酵母:DSB修復はNHEJが中心;NEHJの効率は〜50 %;オフターゲット作用はデータ無し
      • バクテリア:DSB修復はHDRが中心;HDRの効率は〜100 %;オフターゲット作用は致死性のため検出されず
  5. [論文] I-E型CRISPRにはリピートのサイズを決定する2種類の’分子物差し’が存在する
    • Corresponding authors: Rotem Sorek (Weizmann Inst. Science); Udi Qimron (Tel Aviv U.)
    • E. coliの I-E型CRISPR/Casシステムにおけるアダブテーションの段階では、Cas1とCas2によって、侵入DNAのプロトスペーサーがCRISPRアレイにスパーサーとして取り込まれる。
    • CRISPRアレイを構成するリピートには、7塩基の長さの配列が4塩基の間隔をおいて向き合う配列(以下、inverted repeat 1(IR1)とinverted repeat 2(IR2))からなる回文構造が存在し、スペーサーから生成される成熟crRNAにおいてステムループ(“molecular handle”)に至るとされている。研究チームは今回、変異導入実験によって、リアダプテーションに必須のモチーフを発見した。
      • IRsの存在とその向きが効率的なアダプテーションに必須であり、IRsの中に、リーダー配列から遠位の求核攻撃の標的サイトを位置決めするモチーフが存在することを見出した(リーダー配列近位のIR1から16-nt、リーダー配列遠位のIR2から8-nt)。I-E型CRISPR/Casシステムはこの2つの“分子物差し”によってスペーサーの品質管理をしている。
  6. [論文] アーケアSulfolobus islandicus のI-A型CRISPR/CasシステムにおけるcrRNAとDNAプロトスペーサーのハイブリット形成の特異性
    • Corresponding author: Roger A. Garrett (Copenhagen University)
    • CRISPR干渉はcrRNAとDNAプロトスペーサーの間のハイブリッド形成の上に成り立っている。クレンアーキオータ門Sulfolobus では、crRNAとDNAプロトスペーサーとのバイブリッド形成の選択性(stringency)が緩やかである。その機構解明を目指して研究チームは今回、CRISPR 2のスペーサー1と同一および種々のミスマッチを導入したプロトスペーサーとの結合様式を解析した。
      • 39 bpのプロトスペーサーにおいて、CRISPR干渉に重要なハイブリッド形成領域が2箇所(3-7;21-25)存在し、それ以外の領域へのミスマッチ導入はcrRNAとプロトスペーサーの結合に影響を与えなかった。
      • GC含量が高いプロトスペーサーの場合は、CRISPR干渉に21-25の領域が重要であった。
      • S. islandicus には複数のCRISPR/Casシステムが共存しているが、I-A型CRISPR/CasがCRISPR干渉を担っていた。
      • 真核生物のmRNAsの中にはマイクロRNAsのハイブリッド形成箇所が2箇所存在することで結合力と特異性が向上することを想起させる。
  7. [論文] CRISPR/Cas9によるシロイヌナズナの多重遺伝子同時編集の効率と選択性をゲノムワイドで検証
    • Corresponding author: Zachary L. Nimchuk (U. North Carolina at Chapel Hill/Virginia Tech)
    • 植物では遺伝子ファミリーの多くが染色体の様々な位置に分散しているため、多くの遺伝座を特異的に同時に標的とする遺伝子編集技術が必要である。今回、14種類の遺伝子座の全ゲノムシーケンシングを行って、オンターゲットとオフターゲットの編集および染色体転座を評価したところ、これまで小規模な実験で蓄積されたきた知見が支持された。すなわち、オフターゲット作用は検出されず、また、染色体転座は稀であった。これは、コドン最適化したCas9でもシロイヌナズナでの発現が低レベルであることに由来すると考えられるが、今回の結果が他の植物にも成立するか否かとともに、さらなる検証が必要である。