(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/09/20)
  • プロテオミクスをゲノミクス(さらには、トランスクリプトミクス、リン酸化プロテオミクス)に重ね合わせて、癌の分子基盤を解き明かす試み2編 
    Cell 論文 corresponding authors: Daniel W. Chan (Johns Hopkins Medical Inst.); Karin D. Rodland (Pacific Northwest National Lab.) 
    Nat. Common. 論文 corresponding authors: Ernst Lengyel (U. Chicago); Matthias Mann (MPI Biochemistry)
  • [Cell 論文]
    • Clinical Proteomic Tumor Analysis Consortium (CPTAC) の研究成果。
    • 癌シーケンシングプロジェクトであるThe Cancer Genome Atlas (TCGA)由来の169種類の悪性度が高い漿液性卵巣腫瘍(high-grade serous ovarian cancer, HGSOC)(*)を含む174種類の卵巣腫瘍のプロテオームを液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)によって測定し、同定・定量化したタンパク質9,600種類のうち全てのHGSOCサンプルに存在した3,586タンパク質を対象として、プロテオミクスとトランクリプトミクスの統合解析を行った。また、69種類についてはリン酸化プロテオミクスのデータを取得し統合解析に利用した。 
      (*) 原論文とRESEARCH HIGHLIGHTSでは略語としてHGSCs (high-grade serous carcinomas) が使われている。
      • HGSOCの特徴であり染色体不安定性の指標である体細胞におけるコピー数多型異常(copy number alternatoins, CNA)がタンパク質の量に与える影響:異なる染色体上の4領域に存在するCNAsが、翻訳後修飾を介して200を超えるtrans にタンパク質の量を調節することが示唆された。これらのタンパク質は癌の進行をもたらすプロセスに集中し、臨床データとの重ね合わせからCNA領域と予後が相関することが見られた。
      • 遺伝子の相同修復機構の欠陥とヒストンH4のアセチル化が相関し、このアセチル化を指標として患者を層別化可能なことを見出した。
      • リン酸化ペプチドを定量化しPID(pathway interaction database)のパスウエイにマッピングし、リン酸化タンパク質、タンパク質またはmRNAのレベルに基づいてパスウエイをランク付けし、全生存期間との相関を見ることから、短い全生存期間の患者由来のサンプルにおいて活性化している15種類のシグナル伝達ネットワークを同定した(トランスクリプトミクスのデータの解析から同定できたのは1種類のネットワーク)。
  • [Nat. Common. 論文]
    • 8種類のHGSOC組織、30種類の細胞株(浸潤性卵巣腫瘍26種、子宮頸癌2種、不死化卵巣表層上皮細胞2種)、および卵管上皮初代細胞3種)のプロテオームをLC-MS/MSで解析。
    • 10,000を超すタンパク質の定量化に基づいて細胞株は3つのカテゴリーに分類された:上皮細胞;明細胞;間葉系細胞
    • 今回測定したプロテオームデータに加えてCPTAC/TCGAのプロテオームデータセットを、上皮性と間葉系の腫瘍クラスターへと明確に層別化する67種類のタンパク質で構成される指標(signature)を同定した。
    • プロテオミクスに基づく細胞株と腫瘍組織双方の層別化は、HGSOCの起源(卵管由来か卵巣表層上皮由来か)とHGSOCドライバータンパク質への手がかりを与えた。また、今回開発使用した効率的かつ高感度なプロテオミクス解析ワークフローの有用性が実証された。