(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/09/20)
  • Corresponding author: Trey Ideker (UCSD)
  • 殆どの癌には2種類の遺伝子変異が存在する。細胞成長を亢進するか、または、細胞死を回避する変異である。前者に対しては阻害療法が数多く開発されてきたが、腫瘍細胞に細胞死を誘導する遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、を修復する療法の開発は困難であった。研究チームは今回、標的を特定の腫瘍抑制遺伝子に定めるのではなく、腫瘍抑制遺伝子とその他の遺伝子の相互作用に注目し、共に欠損することで腫瘍細胞が細胞死に至る遺伝子の組合せ(合成致死(synthetic lethal)をもたらす遺伝子の組合せ)を探索した。
    • はじめに酵母において、遺伝子欠損実験によってヒト癌抑制遺伝子の相同遺伝子とドラッガブルな遺伝子の169,000組の相互作用をスクリーンし、酵母細胞に合成致死をもたらす相互作用を数千まで絞り込んだ。
    • 続いて、関与する合成致死相互作用の数が多い21種類の薬剤について、HeLa細胞における112種類の腫瘍抑制遺伝子変異との合成致死性を評価した。
    • その結果、酵母とHeLa細胞を共に合成致死に誘導する薬剤と遺伝子変異について、既知の組合せ13種類を含む158種類の新規組合せを同定した。
    • トポイソメラーゼRAD17チェックポイント・キナーゼBLMのそれぞれ組合せについては、細胞株およびまたは患者の生存期間との関連について検証したが、172種類すべての検証さらには多様な癌種についての検証には多くの研究チームの協力が必要である。
    • 酵母とヒト腫瘍細胞株で保存されていた合成致死に関わるネットワークCoCaNets(conserved cancer networks)のデータの活用を期待して、すべての関連データをNDEx(The Network Data Exchange)から公開した。