[出典] COMMENT "Reboot ethics governance in China" Lei R, Zhai X, Zhu W, Qiu R. 
Nature 2019-05-08.

 省察
  • 華中科技大学、北京协和医院、復旦大学ならびに中国社会科学院哲学研究所の生命倫理の研究者が、香港でのゲノムサミットでの'CRISPRbabies'を契機とする中国における自己点検と、今後の中国における科学と倫理のガバナンス (nation's governance)のあり方について投稿した。
  • 近年の中国アカデミアに生じた「アジアさらには世界初」に対する過度な高評価と経済的便益、ならびに規制の不備を背景とした先陣・功名争いを指摘:CRISPR-Cas遺伝子編集と同等の機能があるとしたNgAgo論文発表 、2012年に政府が禁止するまで数百の病院で行われていた幹細胞療法、インフォームド・コンセントを得ないで実施された6~8歳の児童を対象とする遺伝子改変コメ摂取実験、さらには、脳移植*の提案 (*遺体間の頭部移植が中国で行われたと報道されている)。
  • 生命倫理、新技術、さらには人間性 (humanity)に関する教育の欠如
 提言
  • 規制、登録、モニター、情報提供、教育、ならびに偏見解消 (障害者に対する偏見と優生学的発想の排除)についてあるべき姿を提案
  • 米国では、米国公衆衛生局が1932~1972年に行ったタスキギー梅毒実験 が明るみにでたことから医学研究における倫理的規制の議論が巻き起こり1978年のBelmont Report (被験者保護のための倫理原則およびガイドライン)に至った。中国で生命倫理学分野が確立されてからまだ30年である。'CRISPR babies'スキャンダルを契機として、中国は、科学と倫理のガバナンスを根底から見直すべきである。
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