1. 癌細胞株に見られる変異を標的とするCIRPSR/Cas9ノックアウト実験により癌細胞の増殖・生存の必須変異を同定
[出典] "CRISPR/Cas9 as a tool to dissect cancer mutations" Sayed S [..] Buchholz F. Methods 2019-05-09.
  • TU Dresdenのグループは、結腸癌細胞株RKOに見られる各変異を特異的に標的とする100種類のsgRNAsを設計し、プール型スクリーンを経て、UTP14A: S99delSをドライバー遺伝子と同定
2. キノーム (kinome)ワイドCRISPR/Cas9により、胃癌のFGFR阻害剤に対する感受性を調節するキナーゼを同定
[出典] "A functional CRISPR/Cas9 screen identifies kinases that modulate FGFR inhibitor response in gastric cancer" Chen J [..] Ji HP. Oncogenesis 2019-05-20.
  • Stanford University School of Medicineの研究グループは今回、FGFR2が増幅している胃癌細胞株 KatoIIIのFGFR阻害剤AZD4547に対する感受性を制御するキナーゼ20種類をILK、SRCおよびEGFRシグナル伝達パスウエイから同定した。
  • さらに、AZD4547とILKを標的とする低分子阻害剤Cpd22の組み合わせが、KatoIII及びその他3種類のFGFR2増幅胃癌細胞株に対して、相乗効果を示すことを見出した。
3. 鼻咽頭癌が依存する細胞因子とパスウエイをゲノムワイドCRISPR遺伝子ノックアウトスクリーンで同定
[出典] "Genome-wide CRISPR-based gene knockout screens reveal cellular factors and pathways essential for
nasopharyngeal carcinoma" Wang C [..] Zeng MS, Zhao B. JBC 2019-05-09.
  • Brigham and Women's Hospitalと中大腫瘤防治中心などの米中の研究グループは、CRISPRスクリーンで同定した鼻咽頭癌の必須因子とパスウエイを阻害が、鼻咽頭癌の増殖を抑制する一方でSV40で不死化した正常な鼻咽頭上皮細胞を障害しないことを確認
4. CRISPR/Cas9でRDR6遺伝子をノックアウトすることで、ベンサミアナタバコでのタンパク質の効率的発現を実現
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated knockout of the RDR6 gene in Nicotiana benthamiana for efficient transient expression of recombinant proteins" Matsuo K, Atsumi G (産総研).Planta 2019-05-07.
  • ベンサミアナタバコのRDR6遺伝子をCRISPR/Cas9でノックアウトすると、組み換えタンパク質の効率的な一時的発現が実現する。
5. 脂質とカルテノイドの生産微生物工場として有望な担子菌酵母Rhodosporidium toruloidesのCRISPR/Cas9ゲノム編集法を確立
[出典] "Developing a CRISPR/Cas9 system for genome editing in the basidiomycetous yeast Rhodosporidium toruloides" Jiao X [..] Zhang S, Zhao ZK. Biotechnol J 2019-05-08.
  • 大連化学物理研究所の研究グループが、コドン最適化したSaCas9を十分発現する系統において、Ub6プロモーターでsgRNAを発現させることでindels変異誘導率~60%を実現し、ドナーDNAを加えることでHDRを介した遺伝子ノックアウトを実現。
6. PAMを拡張したxCas9(*1)とSpCas9-NG(*2)によるシロイヌナズナへの変異誘導を検証
[出典] "Engineered xCas9 and SpCas9-NG variants broaden PAM recognition sites to generate mutations in Arabidopsisplants" Ge Z [..] Qu LJ. Plant Biotechnol J 2019-05-09.
  • 吉林大学を主とする研究グループは今回、NGG以外のPAMを伴うゲノム領域の編集効率について、xCas9 3.7は野生型のトウモロコドン最適化した野生型Cas9 (ZmCas9)に及ばず、SpCas9-NGはZmCas9に優ったが、ZmCas9によるNGG PAMを伴うゲノム領域の編集効率には及ばなかった。xCas9 3.7とSpCas9-NGによる機能喪失変異誘導は実現した。
  • 哺乳類細胞のような編集効率が得られなかった原因はアグロバクテリウムによる形質導入に起因すると推定。
参考crisp_bio記事
  • (*1) 2018-03-02 xCas9:PAMの拡張とオフターゲット抑制を両立
  • (*2) 2018-08-31 SpCas9-NG:SpCas9の標的範囲をさらに広げる合理的な変異導入
7.  科学コミュニティーのリーダは、'CRISPR babies'に対処すべきか?
[出典] "How Should Science Respond to CRISPR'd Babies?" Greely HT*. Issues Sci. Technol. 2019 35, no. 3 (Spring 2019): 32-37.
(*) Deane F. and Kate Edelman Johnson Professor of Law and a professor, by courtesy, of genetics at Stanford University
  • He Jiankuiの追放を先導すべき;Heの計画・行動を知りながら黙して語らなかった関係者は、情報を公知すべきであったのか、公知すべきとしてどのような枠組みで行うべきであったか、今後、危険な、倫理に反する、あるいは、違法な研究の通報を促す仕組みを熟慮すべき;第2回ヒトゲノム編集国際サミット終了時の報告や主要な主催者のコメントには、生殖細胞系列のゲノム編集に関する当初の議論に見られた「社会的受容を前提として」といった意識が見られない;モラトリウムを言うのであれば、モラトリウムを解除する条件を明確にすべし