[出典] "Live-cell imaging reveals the relative contributions of antigen-presenting cell subsets to thymic central tolerance" Lancaster JN [..] Ehrlich LIR. Nat Commun 2019-05-17.

概要
  • T細胞は胸腺において、個体内のさまざまな組織に特異的な自己抗原(tissue-restricted antigen: TRA)に教育されて、中枢性寛容を学ぶ。教材の抗原は、胸腺髄質上皮細胞 (medullary thymic epithelial cells: mTECs) と樹状細胞 (dendritic cells: DCs)によって提示されるが、これら抗原提示細胞 (antigen-presenting cells: APCs)のサブセットが中枢性寛容確立に果たす役割の比重は詳らかにされていない。
  • The University of Texas at Austinの研究グループは今回、胸腺の切片において、一連のAPCsと胸腺細胞との相互作用を2光子励起顕微鏡法 (原論文Fig. 1引用下図 a参照)により可視化し、DCsとAIRE+mTECsの密な協働が、ポリクローナルおよびモノクローナルなCD4SP*とCD8SP*胸腺細胞の内在TRAsによるネガティブ・セレクションを実質的に実現する機序を明らかにした (* SP: single positive)。central tolerance
補足:mTECsとDCs
  • 成熟mTECsがTRAsを含むプロテオームの90%を発現し、TRAsの多くの発現に調節因子autoimmune regulator (AIRE)が必須である。mTECsは、MHC-I/IIと共刺激因子CD80/CD86も発現することで、自己抗原を、CD8陽性およびCD4陽性のシングルポジティブ胸腺細胞 (CD8SPとCD4SP)に提示し、自己寛容を誘導する。しかし、TRAのいずれについても、AIRE+mTECsが発現する割合はわずかにその1-3%を占めるに過ぎない。
  • 胸腺DCsもMHC-I/IIと共刺激分子を高発現することから、mTECsが発現したTRAsを獲得し、胸腺細胞へ提示することが可能である。DCsはまた、自己抗原を血液から獲得し、末梢組織から胸腺へと輸送する。こうしてDCsが、散在している稀な自己抗原を効率的に胸腺細胞に提示することが可能である。いずれにしても、DCs欠失が中枢性寛容の成立を阻害することが明らかにされている。
  •  APCsによる抗原提示の分子機序についてはこれまで、mTECsまたはDCsの欠損か自己抗原提示機能の阻害による実験に拠っており、APCsセブセットそれぞれの抗原提示への寄与を詳らかにするには、正常な機能を帯びたmTECsとDCsが共存した状態で双方の抗原提示機能を見る必要があった。
補足:研究成果
  • DCとAIRE+mTECsの協働作業は、TRAsの細胞内局在と、抗原提示MHCのクラスに、制御される。
  • AIRE+mTECsが発現するTRAsが、少なくともAIRE+mTECs自身による提示と同程度、DCsによって、提示される
  • DCsのサブセット(*) Sirpα+cDC(cDC2)が、AIRE+mTECs由来のTRAsをクロスプレゼンテーションする。
  •  AIRE+mTECsとDCsが、内在自己抗原をポリクローナルなCD4SPとCD8SP胸腺細胞に提示するが、DCsの寄与の方がやや大きい。
  • (*) "Development and Function of Dendritic Cell Subsets" Mildner A, Jung S. Immunity 2014-05-15.