1. ヒト卵割胚は、BEによる安定したホモ接合型ヌクレオチド置換を可能にする
[出典] "Human cleaving embryos enable robust homozygotic nucleotide substitutions by base editors" Zhang M, Zhou C, Wei Y, Xu C [..] Mitalipov S, Chen Z, Yang H. Genome Biol 2019-05-22.
  • 上海生命科学研究院などの中国研究グループは、BE3とABEを二細胞期および四細胞期の卵割胚に注入することで、MII期の卵母細胞または受精卵への注入の13倍に至るホモ接合型ヌクレオチド置換効率を達成した。マウス胚で報告されたBE3によるオフターゲット変異は、見られなかった (原論文Fig. 1引用下図参照)。Cleaving embryo
2. 癌細胞に見られるスプライシング因子変異と合成致死の関係にある因子を、線虫モデルで同定
[出典] "SF3B1 cancer-related mutations cause vulnerability to further perturbations in the U2 snRNP complex in C. elegans (旧タイトル Modeling of SF3B1 cancer-related missense mutations in C. elegans uncovers targets for synthetic lethal interactions) Serrat X [..] Cerón J. bioRxiv 2019-05-15.
  • SF3B1は癌細胞で高頻度に変異しているスプライシング因子であるが、SF3B1の変異は癌細胞の増殖亢進をもたらすとともに、癌細胞に治療標的となる脆弱性をもたらす可能性がある。スペインのModeling human disease in C. elegans Groupなどスペインとフランスの研究グループは今回、他のモデル動物と異なり、ホモ型SF3B1変異を維持することが可能な線虫において、合成致死スクリーンを行なった。CRISPR/Cas9により変異体と蛍光レポータを作出し、RNAiスクリーンによって、U2 snRNPsftb-1/SF3B1変異と合成致死の関係にあることを同定した。
  • SF3B1関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2019/05/06 [第5項目] CRISPR-Cas9による植物の指向性進化 (directed evolution)を実現 (RNAスプライシング必須遺伝子SF3B1を標的とするCRISPR-Cas9)
3. 標的遺伝子のプロキシーを利用して、CRISPR技術により変異誘発されたシロイヌナズ同定を効率化
[出典] "Proxies of CRISPR-Cas9 activity to aid in the identification of mutagenized Arabidopsis plants" Li R, Vavrik C, Danna CH. bioRxiv 2019-05-14.
  • CRISPR-Cas9ゲノム編集技術の出現によって植物の機能ゲノミクスが大きく進展したが、ゲノム編集が起こった植物を選別する過程の効率化が課題として残っている。 University of Virginiaの研究チームは今回、いずれかの遺伝子座の編集が他の遺伝子座の編集のプロキシーになり得るという前提のもとに、'CRISPR co-editing selection' (以下、CCS)の戦略を実装し、CRISPR変異誘発が起きたシロイヌナズナ同定の効率化を実現した。
  • CCSは、機能解析の対象である遺伝子(gene(s) of interest: GOI)と同時にプロキシーを編集する。プロキシーには、その機能喪失がもたらす表現型が、容易に検出可能であり、かつ、GOIの機能喪失から予想される表現型とは明確に異なる内在遺伝子を選択する。研究チームは、機能が互いに直交する3種類のプロキシー (JAR1; GL1; EIN2)のCCSを行い、いずれのプロキシーについても他のプロキシーに起こる変異を40~100%予測可能なことを見出した。したがって、プロキシーによるスクリーン対象の絞り込みは、CRISPRスクリーンの効率化に貢献することになる。
4. CRISPR技術による細胞特異的な時計遺伝子破壊実験は、ショウジョウバエの時計ニューロン群が分散ネットワークを構成して概日行動を調節することを示唆
[出典] "Dissection of central clock function in Drosophila through cell-specific CRISPR-mediated clock gene disruption" Delventhal R, Pantalia M [..] Shirasu-Hiza M. bioRxiv 2019-05-17.
  • ショウジョウバエでは分子時計タンパク質を発現する~150種類の時計ニューロンが、概日行動を調節し、そのうち神経ペプチドPdfを分泌する時計ニューロン16種類が、概日リズムに必須とされて、"マスターペースメーカ"と呼ばれている。
  • Columbia University Medical Centerの研究グループは今回、Cal4-UASシステムを利用した細胞特異的CRISPR-Cas9遺伝子編集により、時計ニューロンの機能を分析した。その結果、朝時計 (morning oscillator)と夜時計 (evening oscillator)の双方において分子時計タンパク質をノックアウトすると概日行動活性が失われるが、朝時計または夜時計のどちらか一方の分子時計が活きていれば、概日行動が維持されることを見出した。すなわち、どちらかが一方を制御する階層性が見られなかった。
5. 常在および病原性酵母Malassezia furfurの遺伝子機能同定を、アグロバクテリウムを介したT-DNA挿入変異誘発ならびにCRISPR/Cas9遺伝子編集により実現
[出典] "Advancing functional genetics through Agrobacterium-mediated insertional mutagenesis and CRISPR/Cas9 in the commensal and pathogenic yeast Malassezia furfur" Ianiri G, Dagotto G, Heitman J (Duke University Medical Center). bioRixv 2019-05-15.