[出典] "Human Hippocampal Neurogenesis Persists in Aged Adults and Alzheimer’s Disease Patients" Tobin MK [..] Lazarov O. Cell Stem Cell 2019-05-23.

 2019年3月にスペインの研究グループがNature Medicine誌にて「神経学的に異常がみられない高齢者の海馬ではニューロン新生が持続するがアルツハイマー病では急減する」と発表した(*)。University of Illinois at Chicago, The University of British Columbia, Rush University Medical Centerの研究グループは今回、Cell Stem Cell誌にて、海馬におけるニューロン新生が老齢者でもアルツハイマー病患者でも持続することを報告し、ニューロン新生と認知状態が相関することを示唆した。
  • Rush Alzheimer’s Disease CenterとUI Health Biorepositoryから入手した平均年齢90.6歳 (79~99歳)の18名に由来する海馬死後組織を解析し、いずれについても、Nestin+Sox2+神経前駆細胞 (neural progenitor cells: NPCs)とDCX+ニューロブラストおよび未熟ニューロン (immature neurons)を検出した。
  • また細胞数が人によって大きく変動することを見出したが、細胞の分布が海馬内の領域によって変動することも見出した。 Nestin+細胞は海馬腹側に局在し、Nestin+Sox2+PCNA+そしてまたはDCX+細胞は、背側から腹側に向かう軸に沿って一様に分布していた。
  • さらに、ニューロン新生と認知機能の間の相関関係を示唆するデータを得た。DCX+PCNA+細胞数が、MCI患者では減少し、ニューロブラストが多いほど認知状態が良好であった。また、
    DCX+PCNA+細胞数と、SNAP受容体 (SNARE)タンパク質シンタキシンとSNAP-25の間の相互作用のレベルが正相関していた。
  • 海馬におけるニューロン解析結果の比較にあたっては、死後経過時間 (post mortem brain interval: PMI)、固定化時間および組織の処理法の実験条件を比較する必要があることも示唆した。
  • 参考crisp_bio記事:(*)  2019-03-28 90歳代でも海馬にてニューロンが新生する、老化またはアルツハイマー病進行に伴って縮減はするが。