(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/08)
  • Corresponding author: David Baker (University of Washington, Seattle)
  • [背景]
    • 共有結合架橋によってコンフォメーションが制限されている薬理学的に活性な天然ペプチドは一般に、進化の過程で、標的のポケットに精密に適合する形状を獲得している。例えば、コノトキシン、クロロトキシン(腫瘍ペイント)、knottinsおよびシクロチドなどが存在しているが、これらの天然ペプチドはジスルフィド結合または骨格の環化によって取り得る構造が制限されたconstrained peptidesである。
    • Constrained peptidesは薬剤として優れた特性を備えている。すなわち、体内で安定であり、ヒト組織内を容易に移動し、標的に対する特異性を有するという、低分子の特長と抗体の特長を兼ね備えている([情報拠点注] 特殊ペプチド中分子)。このため、天然のconstrained peptidesの改変により新たな生理活性分子の創製が試みられてきたが、天然のconstrained peptidesの構造の多様性が限られ、また、標的のポケットにフィットする全体構造の実現の難しさが障害となっていた。
  • 研究チームは今回Rosettaソフトウエアスイートを利用し、de novo でのconstrained peptides設計について存在していた3つの課題を解決し、de novo 設計を実現し、得られたペプチドの構造がほぼ設計通りであることを実験検証することで、次世代ペプチド創薬の基盤を提示した。
    • 構造のコンピュータ予測による骨格の生成と設計の評価には、環化した骨格とキラリティーが混合した骨格を取り扱える骨格サンプリング法が必要
    • コンフォメーションのストレスを発生することなく、多重の形状制約を組み込み可能にする手法が必要
    • アミノ酸のキラリティーを正確にモデル可能とするエネルギー計算法が必要
  • ジスルフィド結合が存在する18〜47残基のconstrained peptidesを設計した。その一部は、異種の鏡像異性体からなるヘテロキラルの骨格そしてまたはN-C環化骨格を有している。
  • 遺伝子としてエンコード可能で人工的なペプチドは、熱的にも科学的にも例外的に安定であり、E. coliで発現・精製した12種類のペプチドはほぼ設計通りのモデルと一致した。
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