(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/10)
  • ミトコンドリア電子伝達系(呼吸鎖)において、複合体I(NADH/ユビキノン還元酵素)、複合体Ⅱ(ユビキノン)、複合体Ⅲ(補酵素Q-シトクロムc)ならびに複合体Ⅳ(シトクロムcオキシダーゼ)の4種類の複合体が同定され、Ⅰ、ⅢならびにⅣが、膜の内側から外側へプロトンを汲み出すポンプ機構を担っている(なお、ATP合成酵素を呼吸鎖複合体Vとする場合もある)。
  • 呼吸鎖複合体は超複合体(suprecomplexes;respirasome/レスピラソーム)として機能するが、ほとんどの複合体Ⅱはレスピラソームと一体化しないとされている(参考図 論文3のヒツジⅠ/Ⅲ*2/Ⅳのレスピラソームの構造)。
41530001
  1. [論文] ゲノム編集と定量プロテオミクスによるヒト呼吸鎖複合体Iサブユニットの機能同定
    • Corresponding author: Leonid A. Sazanov (Institute of Science and Technology Austria)
    • ヒト呼吸鎖複合体I(NADH: ユビキノン還元酵素)は14個のコア・サブユニットと31個の補助サブユニット(accessoary subunits)の計45個のサブユニットで構成されている。今回、HEK293T細胞において、TALEN続いてCRISPR/Cas9を利用して、31個の補助サブユニットをコードする遺伝子をノックアウトすることから、複合体形成に必須の25サブユニットと、細胞生存に必須の1サブユニットを同定した。
    • SILAC法を利用した定量的プロテオミクスから、サブユニットが欠損すると同じ構造モジュールに属する他のサブユニットの安定性に影響を与えること、加えて、複合体Ⅰ形成に必須であり治療標的となりうる2因子を見出した。
  2. [論文] ブタ心臓由来呼吸鎖複合体Ⅰ・Ⅲ二量体・Ⅳの超複合体クライオ電顕構造
    • Corresponding author(s): Ning GaoMaojun Yang (清華大学)
    • レスピラソームの構造を分解能5.4 Åで再構成し、レスピラソームにおける複合体の配置と複合体間の相互作用を明らかにした。
    • レスピラソームに組み込まれた複合体Ⅰは、フリーな状態での形状からコンパクトな形状へとコンフォメーションが変化していることも明らかになった。
  3. [論文] ヒツジ心臓由来呼吸鎖超複合体クライオ電顕構造
    • Corresponding author: Leonid A. Sazanov (Institute of Science and Technology Austria)
    • Ⅰ・Ⅲ二量体・Ⅳのレスピラソームの2種類の構造、密な(tight)構造と緩んだ(loose)構造、をそれぞれ5.8 Åと7.8 Åの分解能で再構成し、また、ⅠとⅢ二量体の超複合体構造も、分解能7.8 Åで再構成。
    • レスピラソームにおけるタンパク質密度をすべて、既知のサブユニット80個(複合体Ⅰ 45個;複合体Ⅲ 22個;複合体Ⅳ 13個)とその中の膜貫通ヘリックス132本(複合体Ⅰ 78本;複合体Ⅲ 26本;複合体Ⅳ 28本)に帰属し、複合体間の相互作用も分析した。
  4. [論文] ウシ呼吸鎖複合体Iのクライオ電顕構造
1遺伝子発現データ→GSE84913
1プロテオームデータ→PXD004666