1. Cas9が誘導する大規模なゲノム欠損において、マイクロホモロジーが高頻度でみられる
[出典] "Microhomologies are prevalent at Cas9-induced larger deletions" Owens DDG [..] Teboul L, de Bruijn MFTR. Nucleic Acids Res 2019-05-25.
  • University of OxfordとMRC Harwell Instituteの研究グループは、二重のCas9D10Aニッカーゼペア、一対のCas9ヌクレアーゼおよび単独のCas9による編集結果の配列解析から、マウスES細胞、マウス造血前駆細胞およびマウス胚において、意図した以上に長い欠失 (longer deletions: LDs)が発生し、ブレイクポイント結合領域にMMEJと整合するマイクロホモロジーが高頻度で存在することを見出した。
  • LDsはゲノム編集対象とした7種類の染色体上の9ヶ所の遺伝子座上の16サイトすべてについて発生し、最大~7 kbに及んだ。
  • Cas9ニッカーゼのオフターゲット変異誘発頻度はCas9ヌクレアーゼよりも低いとされているが、LDs誘発頻度については、Cas9ヌクレアーゼと同程度であった。
  • 細胞集団内でのLDsの分布は、マイクロホモロジー配列だけからは予測できず、sgRNAs標的サイトとの近接性とsgRNAの切断活性に依存した。
2. オルガノイド技術とCRISPR/Cas9技術による癌抑制因子の機能解析
[出典] "Probing the Tumor Suppressor Function of BAP1 in CRISPR-Engineered Human Liver Organoids" Artegiani B, van Voorthuijsen L, Lindeboom RGH, Seinstra D, Heo I [..]  Clevers H. Cell Stem Cell 2019-05-23.
  • Oncode Instituteをはじめとするオランダの研究グループは今回、ヒト胆管細胞オルガノイドにおいて、癌抑制因子BAP1脱ユビキチン酵素のCRISPR/Cas9ノックアウト実験を行い、BAP1がクロマチン・アクセシビリティーの調節を介して細胞間接合と細胞骨格形成に影響をあたえ、BAP1欠損が、細胞極性と上皮組織に異常をもたらし、運動性を亢進することを見出した。
  • さらに、CRISPR/Cas9により胆管癌においてBAP1と高頻度で共変異を起こしている4種類の遺伝子 (P53,PTEN, SMAD4, およびNF1)に変異を導入したヒト肝臓オルガノイドを免疫不全マウスに異種移植し、BAP1の欠損が加わることで、癌化が誘導されることを同定した。
  • 以上、BAP1の癌抑制機能は、クロマチン・アクセシビリティーの調節機能を介した上皮組織の維持に依ることが示唆された。
3. [レビュー] CRISPR/Cas9システムによる中枢神経系遺伝子編集の動向
[出典] REVIEW "Editing the Central Nervous System Through CRISPR/Cas9 Systems" Cota-Coronado A, Díaz-Martínez NF, Padilla-Camberos E,  Díaz-Martínez NE. Front Mol Neurosci 2019-05-27.
  • 観光局がメディカルツーリズムを推進しているメキシコのCIATEJ (Center for Research and Assistance in Technology and Design of the State of Jalisco)とInstituto Nacional de Perinatología (国立周産期研究所)のグループによるレビュー
  • 遺伝子治療への応用を目的とするCRISPR/Cas9遺伝子編集実験のワークフロー;血液脳関門 (BBB)を超える送達法 (レビューFigure 2引用左下図参照);アデノウイルスによるin vivo遺伝子編集技術の進歩;CRISPRa/iによる遺伝子発現の精密制御;CRISPR/Cas9によるパーキンソン病とアルツハイマー病遺伝子治療への期待;解決すべき課題;結論と展望 ( 分裂終了細胞である神経細胞への高精度なノックインの開発が必要としてHITI法*を引用し、また、RNP複合体の非侵襲性送達法に言及した上で、長期にわたる毒性と効率の評価が必要とした: レビューTABLE 1引用右下図参照)
Different strategies to access the central nervous system Novel nonviral and viral systems for in vivo gene therapy
4. Cas9 mRNAとgRNAを脂質ナノ粒子 (LNP)にて、ヒト血液凝固第IX因子 (F9)ドナー・テンプレートをAAVにて送達することで、モデル動物にて、ヒトFIXタンパク質の正常な血中濃度を実現
[出典] "CRISPR/Cas9-Mediated Targeted Insertion of Human F9 Achieves Therapeutic Circulating Protein Levels in Mice and Non-Human Primates" Huang HR (Intellia Therapeutics). American Society of Gene and Cell Therapy 22nd Annual Meeting. April 29, 2019. (学会発表)
  • マウス成体モデルにて、挿入部位の選択とLNPまたはAAVの用量の調節によりFIXレベルの調節が可能なこと、1回の送達の効果が10ヶ月間維持されることを確認
5. [レビュー] 原発性免疫不全症のCRISPR/Cas9遺伝子治療
[出典] REVIEW "CRISPR/Cas9 applications in gene therapy for primary immunodeficiency diseases" De Ravin SS, Brault J (National Institutes of Allergy and Infectious Diseases). Emerg Top Life Sci 2019-05-23.
  • CRISPR/Cas9による造血幹細胞のゲノム編集による遺伝子治療の可能性と課題
6. [特許] CRISPRシステムによる遺伝子の転写活性化 (activation)、転写抑制 (interference)および遺伝子欠損 (deletion)併用による代謝工学の手法CRISPR-AID
[出典] US20190144852 A1 "Combinatorial Metabolic Engineering Using a CRISPR System"
公開日 2019-05-16. 発明者 Zhao H, Lian J. 権利者 University of Illinois 
関連論文 "Combinatorial metabolic engineering using an orthogonal tri-functional CRISPR system" Lian J, HamediRad M, Hu S, Zhao H. Nat Commun. 2017 Nov 22;8(1):1688 (下図はFig. 1から引用)70142521