1. CRISPR-Cas9によるノックアウト実験からSCAF4とSCAF8によるmRNA抗転写終結の分子機序を同定
[出典] "SCAF4 and SCAF8, mRNA Anti-Terminator Proteins" Gregersen LH [..] Svejstrup JQ. Cell 2019-05-16.
  • タンパク質コーディング遺伝子には複数のポリアデニル化部位が存在し代替ポリアデニル化が発生する。The Francis Crick Institute, The Netherlands Cancer InstituteならびにUniversity of Oxfordの研究グループは今回、SCAF4とSCAF8それぞれのシングルノックアウト)およびダブルノックアウトに、ドキシサイクリンによって誘導可能なSCAF4またはSCAF8をレスキューするコンストラクトを組み合わせた実験により、SCAF4とSCAF8が協働して早期のポリアデニル化を乗り越えて、短縮型タンパク質の生成ひいては細胞死を防止することを同定した。
2. その欠損が、KRASG12C阻害剤の効力を高める一連の遺伝子群を同定し、“collateral dependencies” (CDs) の概念を提唱
[出典] "KRASG12C inhibition produces a driver-limited state revealing collateral dependencies" Lou K [..] Shokat KM, Gilbert LA. Sci Signal. 2019-05-28.
  • GTPアーゼの一種であるKRAS遺伝子の変異が多くの癌をドライブし、その遺伝子産物のタンパク質はアンドラッガブルと言われていた。
  • 2013年にG12C変異を帯びたKRASを阻害する低分子が同定された (*)。この低分子は、GDP結合型のKRASG12Cに特異的に存在するアロステリックスイッチIIポケット (S-IIP)に結合することで、KRASを、この不活性化型に止め、GTPが結合した活性型への遷移を阻害する(*1)。
  • UCSFの研究グループは今回その中で化合物ARS-1620 (*2)に注目し、KRASG12Cを帯びた肺癌と膵臓癌の細胞モデルにおいて、ゲノムスケールCRISPRiを利用して、活性型の維持に必須な遺伝子群 (その欠損がKRASG12C細胞のARS-1620に対する感受性を高める遺伝子群)を同定し、これらの遺伝子群を 、合成致死 "synthetic lethal" (SL)とは異なる“collateral dependencies (CDs)”の概念で捉えることを提唱した。
 * 参考文献
  1.  "K-RasG12C inhibitors allosterically control GTP affinity and effector interactions" Ostrem JM [..] Shokat KM. Nature 2013-11-20.
  2. "Targeting KRAS Mutant Cancers with a Covalent G12C-Specific Inhibitor" Janes MR [..] Liu Y. Cell 2018-01-25.
3. 全エクソームのトリオ解析による遺伝子心疾患の病因遺伝子変異の同定と、CRISPR-Cas9で作出したモデルマウスでの検証
[出典] "Oligogenic inheritance of a human heart disease involving a genetic modifier" Gifford CA [..] Srivastava D. Science 2019-05-31.
  • Gladstone Institute of Cardiovascular DiseaseとUCSFの研究グループは、無症候性の両親と若年性心疾患を発症した子3名の全エクソームシーケンシング解析から、病因候補とみされるMKL2MYH7、およびNKX2-5遺伝子のミスセンス変異を同定した。前2者の変異は心臓発生に関与する転写因子遺伝子であり、無症候の父親由来、NKX2-5は心筋構造タンパク質をコードする遺伝子でありその変異は母親由来であった。
  • 研究グループはCRISPR-Cas9を利用して3種類の変異を帯びたマウスを作出し、複合ヘテロ接合性変異を介して、子らに見られるような心疾患を発症することを確認し、家族由来のhPSC細胞から分化させた心筋細胞を対象とする実験で3種類の遺伝子変異と心疾患との関連を裏付けた。