1. UC Irvine研究チーム、C末端タギングPITCh法をN末端タギングへと拡張
[出典] "Microhomology based CRISPR tagging tools for protein tracking, purification, and depletion" Lin DW, Chung BP, Huang JW, Wang X, Huang L, Kaiser P. J Biol Chem 2019-05-28.
- C末端タギングが不可能なプロテインホスファターゼ2A (PP2Ac)のようなタンパク質の追跡、精製あるいは除去を可能にする効率的N末端タギング法を開発し、HEK293T細胞で検証
- コンストラクト:pX330-YFG-PITCH (Target gRNA, PITCH gRNA, cas9);pN-PITCh-HA (GFP-2A-PuroR-2A-タグ) + Cas9切断サイトに隣接する配列の20 bp長マイクロホモロージー配列
- タグ: 3xHA, HisFlag, mCHerry, GFP, HBTH, H3F-AID, F-AID
参考記事
- 2017-05-06 TALENまたはCRISPR/Cas9を使ったゲノム編集において、ヒト培養細胞、カエル、カイコへの正確かつ高効率な遺伝子ノックインを実現したPITch法
- 2017-06-11 CRISPR/Cas9とAID(オーキシン依存蛋白質分解)技術により必須タンパク質の機能を解明
2. [展望] CRISPR/Cas技術によって哺乳類を対象とする合成生物学のデバイスが整ってきた
[出典] "CRISPR/Cas-based devices for mammalian synthetic biology" Tackhoon Kim, Timothy K Lu. Curr Opin Chem Biol 2019-05-25.
- CRISPR技術の応用は、Casタンパク質の改変および発見によって、RNAの切断およびDNA/RNAの塩基置換へと拡張されてきた。
- 互いに直交しているリガンドまたは光による時空間制御が可能なCRISPR/Casを併用することで (多重化することで)、合成生物学に必要なバイオコンピューティングの基盤が構築された。
- CRISPR/Casで誘導する非可逆的で継代可能なDNA配列の改変により、細胞系譜の追跡と生物記憶素子 (biological memory)の形成が可能になった。
- CRISPRスクリーンにおいて、scRNA-seqと細胞系譜追跡を組み合わせることで、安定して多様なリードアウトが可能になった。
3. エピソーム・プラスミドの最適化により組み換えタンパク質発現に利用されているメタノール資化酵母Pichia pastorisのCRISPR/Cas9ゲノム編集を効率化
[出典] "Construction of a series of episomal plasmids and their application in the development of an efficient CRISPR/Cas9 system in Pichia pastoris" Gu Y ... Kian J ... Xu Z. World J Microbiol Biotechnol 2019-05-27
- 浙江大学は今回、さまざまな自律複製配列 (autonomously replicating sequences: ARSs)を帯びたエピソーム・プラスミドのパネルを調製し、その形質転換効率、コピー数および安定性を比較評価した結果Kluyveromyces lactis から分離されたpanARSを選択し、これまで最も広く利用されてきた内在ARS (PARS1)に対して、ゲノム編集効率が10倍以上に向上することを示した。
- 安定性が高いpanARSを利用することで、タイプⅢプロモーター (SER プロモーター) を利用したsgRNA発現を、初めて実現した。
4. BCR-ABLイタ融合遺伝子を標的とするdCas9-FokIによる慢性骨髄性白血病 (CML)療法
[出典] "Efficient disruption of bcr-abl gene by CRISPR RNA-guided FokI nucleases depresses the oncogenesis of chronic myeloid leukemia cells" Luo Z, Gao M [..] Huang Z, Feng W. Exp. Clin. Cancer Res 2019-05-28
- David R Liuらの先行研究で、Cas9を不活性化したdCas9にFokIヌクレアーゼを融合したエフェクター'FokI-dCas9'は、標的特異性を野生型Cas9の140倍以上へと向上し、Cas9ニッカーゼ・ペアと同等の編集効率を実現することが報告されている (Nature Biotechnol 2014)。
- 重慶医科大学の研究チームはこのCRISPR RNA-guided FokI nucleases (RFNs)一対とドナー配列を利用して (原論文FIg. 1引用下図参照)、
BCR-ABL融合癌遺伝子に未成熟終止コドンを発生させることで全長タンパク質の生成を阻害し、ひいては、CML細胞株およびCML幹細胞・前駆細胞の増殖を抑制し細胞死へと誘導可能なことを示した。また、モデルマウスに移植した遺伝子編集CML細胞の白血病誘発性が著しく低減していることも示した。
5. 胎児線維芽細胞のCRISPR/Cas9遺伝子編集と体細胞核移植によりメラノコルチン3受容体 (MC3R)ノックアウト・ブタを作出
[出典] "Generation of an MC3R knock-out pig by CRSPR/Cas9 combined with somatic cell nuclear transfer (SCNT) technology" Yin Y [..] Zhang J, Li Q. Lipids Health Dis 2019-05-28.
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