[出典] "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposases" Strecker J [..] Zhang F. Science 2019-06-06.

関連News & Views Jumping at the chance for precise DNA integration.  Kwon JB, Gersbach CA. Nat Biotechnol. 2019-08-01

背景
 CRISPR-Casヌクレアーゼは核酸配列の操作ツールとして強力であるが、標的部位にDNAを挿入する目的への利用には、二本鎖DNA切断 (DSB)とNHEJやHDRといったDSBからのDNAの内在修復機構を必要とするために、未だ、低効率、オフターゲット作用、細胞型依存性などの課題を残している。また、dCas9に基づく塩基編集 (BE)はDSBを介さないが、一定のウインドウ内での1塩基置換に限定され、オフターゲット作用も伴う。

概要

 Broad InstituteのFeng ZhangらにNCBIのKira S. MakarogaとEugene V. Kooninが加わった研究チームは今回、トランスポゾンの一端にTn7様トランスポザーゼ遺伝子をコードし、他の一端にCRSIPRサブタイプV-K のCRISPRアレイと不活性なRuvC様ヌクレアーゼドメインを帯びたエフェクタCas12kをコードしているシアノバクテリア Scytonema hofmanni 由来の'CRISPR-associated transposase (CAST)'によって (Fig. 1-A参照 )、E. coli ゲノムのsgRNA標的サイトに、DSBを介さずに、外来DNAを80%の効率で挿入可能なことを実証した。真核生物ゲノムへの展開も可能か、興味深い

Tn7様トランスポゾン
 Tn7トランスポゾン (*1)はE. coliで発見され、attTn7と命名された特定のサイトに限り高頻度で転移し、他のサイトへの転移は低頻度という特徴を帯びている。
 E .V Kooninは2019年6月5日にNature Reviews Microbiologyに発表したトランスポゾンを含む可動遺伝因子(Mobile genetic elements: MGEs)からCRISPR-Casシステムへの遺伝子の流れとCRISPR-CasシステムのコンポーネントからMGEsへの遺伝子の流れをテーマとする論文において(*2)、Tn7様トランスポゾンとCRISPR-Casとの間の相関を詳細に論じたところであった (同論文Figure 1  内の'LE---RE'に注目)
 トランスポゾンにコードされたCRISPR-Casシステムの中で、サブタイプV-Kはもっとも単純で、単一のCasエフェクタCas12k (C2c5)を帯び、これまでのところ、シアノバクテリアだけに見出されている。また、V-Kのスペーサ560種類のうち、プロトスペーサと一致するのは、シアノバクテリ・プラスミドに由来する3種類と、トランスポゾンのIS200またはIS650ファミリに由来する3種類の計6種類に過ぎない。

S. hofmanni 由来のCAST (ShCAST)によるE. coliゲノムへのDNA挿入
 In vitroでの予備実験を経て、CRISPR-CasエフェクターCas12kとトランスポザーセ遺伝子TnsB, TnsCおよびTniQで構成されるShCASTを帯びたプラスミドpHelperと、トランスポゾンの左右のエレメント (LEとRE)の間に挿入DNAをカーゴとして組み込んだプラスミドpDonorをE. coliに同時に導入した(Fig. 4-A参照)。
  • 標的48ヶ所のうち29ヶ所に挿入されたことをPCRによって同定した。そのうち10ヶ所についてddPCRによって挿入頻度を判定し、2ヶ所について挿入頻度が80%にも達することを見出した (Fig. 4-B参照) 。また、その一方について、0.5~10 kbの長さのカーゴ配列全てについて挿入頻度が40%を超えることも確認した (Supplementary Materials Fig. S9 - C参照)。
  • 研究チームは、実験結果に基づいて、ScCASTがPAM配列 (GTN-CAN)の下流60-66 bp下流の標的サイトにカーゴ配列を挿入する (Fig. 5参照)機序のモデルを提案した。
  • ShCASTはDSBに伴うindel変異を伴わないが、トランスポゾンのLE (左端)とRE (右端)の配列も挿入されることから、スカーレスではない。
  • ShCASTのオフターゲット挿入はオンターゲットへの挿入の1%未満の頻度であった。オフターゲット挿入サイトはサンプル間で共通でありsgRNA依存性を示さず、Cas12kに由来する現象ではないと考えられ、また、高発現遺伝子座で頻度が高くなる傾向を示した。
  • (注) 研究チームはShCASTと共に、Anabaena cylindrica CAST (AcCAST)についても評価し、AcCASTがPAMの下流49-56 bpにカーゴを挿入することを見出した。
特許出願
 Feng Zhanと筆頭著者のJonathan Streckerを発明者として、Broad Instituteは特許を出願した (#62/780,658)。

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