[注] CAST (CRISPR-associated transposase)
2022-10-15 CASTについて語ったFeng ZahngのYouTubeへのリンクを追記:2021Edward Novitski Prize: Feng Zhang. 2021-05-28 https://www.youtube.com/watch?v=9XaiY9_sQOM (〜61分)
2020-06-28 2020-06-18 特許公開を追記:特許文書では本手法の適用範囲が原核生物細胞から広がっている - 真核生物細胞, 哺乳類細胞, 非ヒト霊長類, ヒト細胞, 植物細胞にも適用可能とされている "In some embodiments, the cell is a prokaryotic cell. In some embodiments, the cell is a eukaryotic cell. In some embodiments, the cell is a mammalian cell, a cell of a non-human primate, or a human cell. In some embodiments, the cell is a plant cell. In another aspect, the present disclosure provides an organism or a population thereof comprising the cell herein"
2020-06-09 追記 Streckerらの論文に対して「カーゴDNAを帯びたトランスポゾンだけでなくドナー・プラスミドも挿入されるのでは」という指摘があった [1]。これに対して、Streckerらが「shCASTに拠る挿入実験を繰り返した上で、カーゴDNAの二重の挿入とドナーのバックボーンが挿入される場合があることを認めた上で、5'末端にニックを入れた直鎖状プラスミドを使用することで、カーゴDNAの挿入に限定できる」と回答した [2]:
2022-10-15 CASTについて語ったFeng ZahngのYouTubeへのリンクを追記:2021Edward Novitski Prize: Feng Zhang. 2021-05-28 https://www.youtube.com/watch?v=9XaiY9_sQOM (〜61分)
2020-06-28 2020-06-18 特許公開を追記:特許文書では本手法の適用範囲が原核生物細胞から広がっている - 真核生物細胞, 哺乳類細胞, 非ヒト霊長類, ヒト細胞, 植物細胞にも適用可能とされている "In some embodiments, the cell is a prokaryotic cell. In some embodiments, the cell is a eukaryotic cell. In some embodiments, the cell is a mammalian cell, a cell of a non-human primate, or a human cell. In some embodiments, the cell is a plant cell. In another aspect, the present disclosure provides an organism or a population thereof comprising the cell herein"
2020-06-09 追記 Streckerらの論文に対して「カーゴDNAを帯びたトランスポゾンだけでなくドナー・プラスミドも挿入されるのでは」という指摘があった [1]。これに対して、Streckerらが「shCASTに拠る挿入実験を繰り返した上で、カーゴDNAの二重の挿入とドナーのバックボーンが挿入される場合があることを認めた上で、5'末端にニックを入れた直鎖状プラスミドを使用することで、カーゴDNAの挿入に限定できる」と回答した [2]:
- "Comment on "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposases" Rice PA, Craig NL, Dyda F. Science 2020-06-05;
- "Response to Comment on "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposase" Strecker J [..] Zhang F. Science 2020-06-05.
2019-06-08 初稿
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[出典] "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposases" Strecker J [..] Zhang F. Science 2019-06-06.
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[出典] "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposases" Strecker J [..] Zhang F. Science 2019-06-06.
関連News & Views "Jumping at the chance for precise DNA integration" Kwon JB, Gersbach CA. Nat Biotechnol. 2019-08-01
背景
CRISPR-Casヌクレアーゼは核酸配列の操作ツールとして強力であるが、DNAを標的部位に挿入するには、Cas9が誘導する二本鎖DNA切断 (DSB)の修復にNHEJやHDRといった細胞内在DNA修復機構を必要とするために、未だ、低効率、オフターゲット作用、細胞型依存性などの課題を伴っている。また、ヌクレアーゼ活性を不活性化したdCas9に基づく塩基編集 (BE)は、DSBを必要としない利点を備えているが、一定のウインドウ内での1塩基置換に制限されており、また、オフターゲット作用も伴う。
概要
Broad InstituteのFeng ZhangらにNCBIのKira S. MakarogaとEugene V. Kooninが加わった研究チームは今回、シアノバクテリア Scytonema hofmanniゲノムに、CRISPRシステムを伴うトランスポゾンを見出して [*]、CAST (CRISPR-associated transposase) と命名し、CASTを利用することで、E. coli ゲノムのsgRNA標的サイトに、DSBを介さずに、外来DNAを80%という高い効率で挿入可能なことを示した。CASTを真核生物ゲノムへの遺伝子ターゲッティングに利用可能か、興味深い。
概要
Broad InstituteのFeng ZhangらにNCBIのKira S. MakarogaとEugene V. Kooninが加わった研究チームは今回、シアノバクテリア Scytonema hofmanniゲノムに、CRISPRシステムを伴うトランスポゾンを見出して [*]、CAST (CRISPR-associated transposase) と命名し、CASTを利用することで、E. coli ゲノムのsgRNA標的サイトに、DSBを介さずに、外来DNAを80%という高い効率で挿入可能なことを示した。CASTを真核生物ゲノムへの遺伝子ターゲッティングに利用可能か、興味深い。
- [*] CASTの5'末端にはTn7様トランスポザーゼ遺伝子がコードされており、3'末端にはCRSIPRサブタイプV-Kの不活性なRuvC様ヌクレアーゼドメインを帯びたエフェクタCas12kとCRISPRアレイがコードされている (原論文Fig. 1-A参照 )。
[参考] Tn7様トランスポゾンとCRISPRシステムの関係
Tn7トランスポゾン [*1]はE. coliで発見され、attTn7と命名された特定のサイトに限り高頻度で転移し、他のサイトへの転移は低頻度という特徴を帯びている。
E .V KooninはCornell UのJ. E. Petersなどと、トランスポゾンがCRISPR-Casシステムを自らの伝播に利用することをPNAS 2017-08-29 [*2]に発表していたが、Nature Reviews Microbiology 2019-06-05論文にて、トランスポゾンを含む可動遺伝因子(Mobile genetic elements: MGEs)からCRISPR-Casシステムへの遺伝子の流れとCRISPR-CasシステムのコンポーネントからMGEsへの遺伝子の流れをテーマとする論文において[*3]、Tn7様トランスポゾンとCRISPR-Casとの間の相関を詳細に論じたところであった (同論文Figure 1 内の'LE---RE'に注目)
Tn7トランスポゾン [*1]はE. coliで発見され、attTn7と命名された特定のサイトに限り高頻度で転移し、他のサイトへの転移は低頻度という特徴を帯びている。
E .V KooninはCornell UのJ. E. Petersなどと、トランスポゾンがCRISPR-Casシステムを自らの伝播に利用することをPNAS 2017-08-29 [*2]に発表していたが、Nature Reviews Microbiology 2019-06-05論文にて、トランスポゾンを含む可動遺伝因子(Mobile genetic elements: MGEs)からCRISPR-Casシステムへの遺伝子の流れとCRISPR-CasシステムのコンポーネントからMGEsへの遺伝子の流れをテーマとする論文において[*3]、Tn7様トランスポゾンとCRISPR-Casとの間の相関を詳細に論じたところであった (同論文Figure 1 内の'LE---RE'に注目)
- [*1]"Tn7: a target site-specific transposon" Craig NL. Mol Microbiol. 1991 Nov;5(11):2569-73.
- [*2] “Recruitment of CRISPR-Cas systems by Tn7-like transposons.” Proc Natl Acad Sci U S A. 2017-08-29/08-15.; crisp_bio 2017-08-18 トランスポゾンはCRISPR-Casシステムを取り込み自らの伝播に利用する
- [*3] CRISPRメモ_2019/06/06 [第5項目] CRISPR-Casの獲得免疫応答以外の機能と可動遺伝因子の貢献
トランスポゾンにコードされたCRISPR-Casシステムの中で、サブタイプV-Kはもっとも単純で、単一のCasエフェクタCas12k (C2c5)を帯び、これまでのところ、シアノバクテリアだけに見出されている。また、V-Kのスペーサ560種類のうち、プロトスペーサと一致するのは、シアノバクテリ・プラスミドに由来する3種類と、トランスポゾンのIS200またはIS650ファミリに由来する3種類の計6種類に過ぎない。
S. hofmanni 由来のCAST (ShCAST)によるE. coliゲノムへのDNA挿入
In vitroでの予備実験を経て、CRISPR-CasエフェクターCas12kとトランスポザーセ遺伝子TnsB, TnsCおよびTniQで構成されるShCASTを帯びたプラスミドpHelperと、トランスポゾンの左右のエレメント (LEとRE)の間に挿入DNAをカーゴとして組み込んだプラスミドpDonorをE. coliに同時に導入した(Fig. 4-A参照)。
- 標的48ヶ所のうち29ヶ所に挿入されたことをPCRによって同定した。そのうち10ヶ所についてddPCRによって挿入頻度を判定し、2ヶ所について挿入頻度が80%にも達することを見出した (Fig. 4-B参照) 。また、その一方について、0.5~10 kbの長さのカーゴ配列全てについて挿入頻度が40%を超えることも確認した (Supplementary Materials Fig. S9 - C参照)。
- 研究チームは、実験結果に基づいて、ScCASTがPAM配列 (GTN-CAN)の下流60-66 bp下流の標的サイトにカーゴ配列を挿入する (Fig. 5参照)機序のモデルを提案した。
- ShCASTはDSBに伴うindel変異を伴わないが、トランスポゾンのLE (左端)とRE (右端)の配列も挿入されることから、スカーレスではない。
- ShCASTのオフターゲット挿入はオンターゲットへの挿入の1%未満の頻度であった。オフターゲット挿入サイトはサンプル間で共通でありsgRNA依存性を示さず、Cas12kに由来する現象ではないと考えられ、また、高発現遺伝子座で頻度が高くなる傾向を示した。
- (注) 研究チームはShCASTと共に、Anabaena cylindrica CAST (AcCAST)についても評価し、AcCASTがPAMの下流49-56 bpにカーゴを挿入することを見出した。
特許出願
Feng Zhanと筆頭著者のJonathan Streckerを発明者として、Broad Instituteは特許を出願した (#62/780,658)。2020-06-18特許公開: "CRISPR-associated tranposase systems and methods of use thereof" US20200190487 A1.
後発関連論文記事
Feng Zhanと筆頭著者のJonathan Streckerを発明者として、Broad Instituteは特許を出願した (#62/780,658)。2020-06-18特許公開: "CRISPR-associated tranposase systems and methods of use thereof" US20200190487 A1.
後発関連論文記事
- 2019-06-13 短縮型I-F CRISPR-Casを帯びたトランスポゾンにより、DSBを介さず大腸菌ゲノム標的サイトにDNAをノックイン
- 2019-07-19 トランスポゾンとCRISPR-Casシステムの協働によるDNAターゲッティングの構造基盤
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