2020-06-28 2020-06-18 特許公開を追記:特許文書では本手法の適用範囲が原核生物細胞から広がっている - 真核生物細胞, 哺乳類細胞, 非ヒト霊長類, ヒト細胞, 植物細胞にも適用可能とされている "In some embodiments, the cell is a prokaryotic cell. In some embodiments, the cell is a eukaryotic cell. In some embodiments, the cell is a mammalian cell, a cell of a non-human primate, or a human cell. In some embodiments, the cell is a plant cell. In another aspect, the present disclosure provides an organism or a population thereof comprising the cell herein"
2020-06-09 追記 Strecherらの論文に対して「カーゴDNAを帯びたトランスポゾンだけでなくドナー・プラスミドも挿入されるのでは」という指摘があった [1]。これに対して、Strecherらが「shCASTに拠る挿入実験を繰り返した上で、カーゴDNAの二重の挿入とドナーのバックボーンが挿入される場合があることを認めた上で、5'末端にニックを入れた直鎖状プラスミドを使用することで、カーゴDNAの挿入に限定できる」と回答した [2]:
  1. "Comment on "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposases" Rice PA, Craig NL, Dyda F. Science 2020-06-05
  2. "Response to Comment on "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposase" Strecker J [..] Zhang F. Science 2020-06-05
2019-06-08 初稿
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[出典] "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposases" Strecker J [..] Zhang F. Science 2019-06-06.

関連News & Views "Jumping at the chance for precise DNA integration" Kwon JB, Gersbach CA. Nat Biotechnol. 2019-08-01

背景
 CRISPR-Casヌクレアーゼは核酸配列の操作ツールとして強力であるが、DNAを標的部位に挿入するには、Cas9が誘導する二本鎖DNA切断 (DSB)の修復にNHEJやHDRといった細胞内在DNA修復機構を必要とするために、未だ、低効率、オフターゲット作用、細胞型依存性などの課題を伴っている。また、ヌクレアーゼ活性を不活性化したdCas9に基づく塩基編集 (BE)は、DSBを必要としない利点を備えているが、一定のウインドウ内での1塩基置換に制限されており、また、オフターゲット作用も伴う。

概要

 Broad InstituteのFeng ZhangらにNCBIのKira S. MakarogaとEugene V. Kooninが加わった研究チームは今回、シアノバクテリア Scytonema hofmanniゲノムに、CRISPRシステムを伴うトランスポゾンを見出して [*]、CAST (CRISPR-associated transposase) と命名し、CASTを利用することで、E. coli ゲノムのsgRNA標的サイトに、DSBを介さずに、外来DNAを80%とう高い効率で挿入可能なことを示した。CASTを真核生物ゲノムへの遺伝子ターゲッティングに利用可能か、興味深い。
  • [*] CASTの5'末端にはTn7様トランスポザーゼ遺伝子がコードされており、3'末端にはCRSIPRサブタイプV-Kの不活性なRuvC様ヌクレアーゼドメインを帯びたエフェクタCas12kとCRISPRアレイがコードされている (原論文Fig. 1-A参照 )
[参考] Tn7様トランスポゾンとCRISPRシステムの関係

 Tn7トランスポゾン (*1)はE. coliで発見され、attTn7と命名された特定のサイトに限り高頻度で転移し、他のサイトへの転移は低頻度という特徴を帯びている。

 E .V Kooninは2019年6月5日にNature Reviews Microbiologyに発表したトランスポゾンを含む可動遺伝因子(Mobile genetic elements: MGEs)からCRISPR-Casシステムへの遺伝子の流れとCRISPR-CasシステムのコンポーネントからMGEsへの遺伝子の流れをテーマとする論文において(*2)、Tn7様トランスポゾンとCRISPR-Casとの間の相関を詳細に論じたところであった (同論文Figure 1  内の'LE---RE'に注目)
 トランスポゾンにコードされたCRISPR-Casシステムの中で、サブタイプV-Kはもっとも単純で、単一のCasエフェクタCas12k (C2c5)を帯び、これまでのところ、シアノバクテリアだけに見出されている。また、V-Kのスペーサ560種類のうち、プロトスペーサと一致するのは、シアノバクテリ・プラスミドに由来する3種類と、トランスポゾンのIS200またはIS650ファミリに由来する3種類の計6種類に過ぎない。

S. hofmanni 由来のCAST (ShCAST)によるE. coliゲノムへのDNA挿入
 In vitroでの予備実験を経て、CRISPR-CasエフェクターCas12kとトランスポザーセ遺伝子TnsB, TnsCおよびTniQで構成されるShCASTを帯びたプラスミドpHelperと、トランスポゾンの左右のエレメント (LEとRE)の間に挿入DNAをカーゴとして組み込んだプラスミドpDonorをE. coliに同時に導入した(Fig. 4-A参照)。
  • 標的48ヶ所のうち29ヶ所に挿入されたことをPCRによって同定した。そのうち10ヶ所についてddPCRによって挿入頻度を判定し、2ヶ所について挿入頻度が80%にも達することを見出した (Fig. 4-B参照) 。また、その一方について、0.5~10 kbの長さのカーゴ配列全てについて挿入頻度が40%を超えることも確認した (Supplementary Materials Fig. S9 - C参照)。
  • 研究チームは、実験結果に基づいて、ScCASTがPAM配列 (GTN-CAN)の下流60-66 bp下流の標的サイトにカーゴ配列を挿入する (Fig. 5参照)機序のモデルを提案した。
  • ShCASTはDSBに伴うindel変異を伴わないが、トランスポゾンのLE (左端)とRE (右端)の配列も挿入されることから、スカーレスではない。
  • ShCASTのオフターゲット挿入はオンターゲットへの挿入の1%未満の頻度であった。オフターゲット挿入サイトはサンプル間で共通でありsgRNA依存性を示さず、Cas12kに由来する現象ではないと考えられ、また、高発現遺伝子座で頻度が高くなる傾向を示した。
  • (注) 研究チームはShCASTと共に、Anabaena cylindrica CAST (AcCAST)についても評価し、AcCASTがPAMの下流49-56 bpにカーゴを挿入することを見出した。
特許出願
 Feng Zhanと筆頭著者のJonathan Streckerを発明者として、Broad Instituteは特許を出願した (#62/780,658)。2020-06-18特許公開: 
 "CRISPR-associated tranposase systems and methods of use thereofUS20200190487 A1.

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