(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/11/09)
  • Corresponding author: 前田直良前仲勝実(北海道大学)
  • 単純ヘルペスウイルス-1(HSV-1)のウイルスの複製過程を標的とするアクシロビルペンシクロビルは抗ヘルペス剤として強力であるが、繰り返し使用することで薬剤耐性を獲得したHSV-1が発生する。そこで、HSV-1の細胞への侵入過程を標的とする創薬が試みられてきている。研究チームは先行研究で、HSV-1のエンベロープ糖タンパク質の一種であるgBが、宿主の免疫細胞表面の抑制型免疫受容体PILRα(paired immunoglobulin-like type 2 receptor alpha)を介して侵入する過程の構造基盤を明らかにし(参考図 参照)、さらに、gB由来の特定のペプチドがgBのPILRαへの結合を競合阻害することを見出していた。
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  • 今回、gBを介したHSV-1の感染を阻害する新たな分子を迅速スクリーンする細胞融合アッセイ法を開発した。
    • 本手法ではエフェクター細胞と標的細胞の融合を判定する。
      • エフェクター細胞:HSV-1の糖タンパク質群(gB, gD, gH, およびgL)とT7 RNAポリメラーゼの発現プラスミドを感染させたCHO細胞 標的細胞:T7プロモーター下でホタルルシフェラーゼを発現するプラスミドを感染させたPILRα発現CHO-K1細胞
      • エフェクター細胞と標的細胞を共培養し、融合の有無を発光で判定。
      • このアッセイ法を利用して、O-結合型グリコシル化されたT抗原ペプチドが、用量依存で、細胞融合を強力に阻害することを見出た。
      • この細胞融合を指標とするウイルスーフリーのgBを介したHSV-1感染の阻害剤のスクリーンに有用である。