(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/11/19)CRISPR関連文献メモ_2016/11/19
  • Corresponding author: Juan Carlos Izpisua Belmonte (Salk Institute for Biological Studies)
  • CRISPR/Cas9システムによる外来遺伝子ノックインは、相同アームを両端に接合した外来遺伝子をテンプレートとすることで、内在性の相同組換えによるDNA二重鎖切断修復(HDR)を介して実現されてきている。しかし、その効率は極めて低い。特に、内在性HDRは、細胞周期の非分裂期(G0期とG1期)には活性化しないことから、成人の神経細胞のように分裂終了細胞(非分裂細胞)へのノックインに利用できない。
  • CRISPR/Cas9による遺伝子ノックインの効率化を目指してこれまでに、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)修復機構を利用するPITCh法や、遺伝子ノックアウトに利用される非相同末端結合(NHEJ)修復機構を巧妙にノックインに活用する手法(Auer, TO et al., 2014)が開発されてきた。
  • 今回、米国・日本・中国・スペイン・サウジアラビアの国際共同研究チームは、NHEJを活用する手法を改良してより安定でより高効率な外来遺伝子のノックイン法であるHITI(*)を開発した。 
    (*)HITI(ヒティー)法は、“homology-independent targeted integration”に由来する呼称であり、その仕組みについては下図参照 (導入先(ターゲット)内と同一の~20塩基の配列を逆向きに、挿入したい遺伝子に結合したドナーを用意し、Cas9でターゲット内の配列とドナー内の配列の双方を切断することで、NHEJ過程を介して、ターゲットへのノックインが実現する)HITI
  • In vitro 遺伝子ノックインの実証
    • HEK293細胞においてPITCh法に比べて10倍以上の効率でノックイン
    • 非分裂細胞である生後マウス由来の初代培養神経細胞にノックイン(遺伝子導入細胞あたり最大60%)
  • In vivo 遺伝子ノックインの実証
    • HITIコンストラクトを子宮内エレクトロポレーションすることで、マウス胎児脳へノックイン。
    • アデノ随伴ウイルス(AAV)を利用してGFPをレポーターとして含むHITIコンストラクトをマウス成体の脳の局所に注射することで神経細胞へノックイン。
    • 同じくHITI-AAVをAi14マウスに静脈注射し、GFPを肝臓、心臓、および大腿四頭筋などの各組織の細胞にノックイン(効率は、それぞれに4.2%、3.4%、および10.0%)。
    • Mertk 遺伝子を欠損した網膜色素変性症モデルラットRCS)の生後3週齢に、Mertk 修復配列を含むHTI-AAVを網膜下に注入したところ、ノックインが想定通り起こり、Mertk mRNA量が増加し、網膜の外顆粒層の厚みが増し、網膜電位の応答も改善された。しかし、視覚を完全に回復するには至らず、より早い時期に遺伝子治療することが望ましいことが示唆された。