[出典] "Uncoupling of sgRNAs from their associated barcodes during PCR amplification of combinatorial CRISPR screens" Hegde M, Strand C, Hanna RE, Doench JG. PLoS One. 2018 May 25;13(5):e0197547.(bioRxiv 2018-02-14)

Uncoupling現象
 哺乳類細胞を対象とするプール型スクリーンは、解析対象の遺伝要素と、スクリーン結果を次世代シーケンシングで解析するためのバーコードが対応していること (coupling)を前提としているが、レンチウイルス・ライブラリー構築時にcouplingが切れる(uncoupling)現象が発生することが知られている。Uncouplingは、コンビナトリアルCRISPRスクリーンにおける2種類のsgRNA配列を定量する場合も、解決しなければならない課題である。

コンビナトリアルCRISPRスクリーン法"Big Papi"へのバーコード組み込み
 今回論文の責任著者のJ. G. Doenchらは2017年に、SpCas9とSaCas9を組み合わせて2種類の遺伝子を同時に編集するスクリーン法"Big Papi" (Nat Biotechnol, 2017; crisp_bio記事*)を開発していた。BigPaiでは、SpCas9を発現させた細胞に、SaCas9ならびにSpCas9 sgRNAとSaCas9 sgRNAを帯びたプラスミドpPapi (Addgene #96921)を単一のベクター (Big Papiベクター)で送達する。
 pPapi設計にあたって、相対的に長くなりシーケンシング経費はかさむが、1回のシーケンシングで読み出せるように2種類のsgRNAsを~200 ntsの間隔を空けて配置した。次いで、経費節減のため、バーコード配列を組み込むことで、2種類のsgRNAsの間隔を狭めたプール型スクリーンを計画した。

プラスミドpPapi へのバーコード組み込み (Fig 1引用下図参照)
pPapi
 Sp tracrRNAとSa tracrRNAの3'末端にそれぞれ長さ6 ntsのバーコード配列 (ハミング距離2 以上に設定)を結合し、プラスミド上で17 ntsの間隔で配置し、29 ntの長さの配列のシーケンシングによってsgRNAsの組み合わせ同定が可能になるように設計した 。

Uncouplingの要因
 研究チームは、uncouplingが標的遺伝要素とsgRNAの間隔が広がるほど高頻度になるが、PCR増幅過程もuncouplingの原因であることを示し、DNAの量とPCRサイクル数を抑制するほど、uncouplingが抑制されることを見出した。その結果に基づいて最適な実験条件を推奨し、また、uncouplingを最小限に留めつつバーコードの単一ショート・シーケンシングによるスクリーンを可能とする前述ベクターを設計した。

関連crisp_bio記事
  • (*) Big PapiCRISPRメモ_2017/12/24 [第2項] SaCas9とSpCas9の併用による効率的なコンビナトリアル遺伝子スクリーンを実現
  • DoenchらのCorrespondence:CRISPRメモ_2018/09/20 [第1項] プール型CRISPRスクリーニングにおける'アイデンティティー・クライシス'