(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/11/28)
  1. [論文] ゲノムワイドのCRISPRスクリーンによって膵管腺癌の創薬ターゲットを同定
    • Corresponding authors: Sachdev SidhuJason MoffatStéphane Angers(U. Toronto)
    • トロント大学の研究チームは変異RNF43 遺伝子を帯びたヒト膵管腺癌(PDAC)細胞株HPAF-IIを主な対象としてプール型gRNAライブラリーを利用してゲノムワイドで必須遺伝子のCRISPRスクリーンを行い、Wntタンパク質が結合する10種類のFrizzledレセプターの中でFZD5が、HPAF-IIの必須遺伝子であることを同定した)。 
    • 加えて、抗FZD5抗体と抗FZD8抗体は、HPAF-II in vitro増殖と異種移植モデルin vivoにおける癌細胞増殖を阻害し、また、RNF43 変異を帯びた患者由来PDAC細胞の増殖も阻害した。さらに、RNF43 変異を帯びた患者由来の大腸癌のオルガノイドも、FZD5抗体に感受性を示した。
    • 本研究は、FZD5が癌療法の標的として有望であることを示唆するとともに、CRISPRスクリーンが抗体の標的とする細胞表面の標的の同定・評価に有効であることを示した。
  2. [論文] MEMOIR法: 胞系譜と細胞過程をゲノム内に記録し読み出し、解析する
    • Corresponding authors: Michael B. ElowitzLong Cai (California Institute of Technology)
    • MEMOIRは“Memory by Engineered Mutagenesis with Optical In situ Readout”を意味し、記録にCRISPR/Cas9技術を、読み出しにCai等が先行研究で開発していた単一細胞のin situ RNAプロファイリングを可能とした技術seqFISH法(smFISH法)を、利用する。
      • MEMOIR法は、“scratchpads”配列と“barcode”配列からなるコンストラクトをPiggyBacトランスポゾンでゲノムに組み込み、CRISPR/Cas9の標的遺伝子突然変異誘発によって引き起こされた“scratchpads”群の変化を、seqFISH法で読み出して、細胞系譜と細胞過程を再構成する。
      • “Scratchpads”は10回反復配列(PP7ファージに由来するステムループ20個)であり、そのCas9による編集結果が細胞分化や細胞過程の記録となる。 
        (*) [情報拠点注] Scratchpadはメモ帳に加えてコンピュータの高速メモリーも意味する。
      • seqFISH法 論文
    • [実証実験] MEMOIR法によって、マウスES細胞の分化に対応する細胞系譜を3〜4世代にわたって遡及的に再構成。また、同一細胞における内在遺伝子発現データと再構成細胞系譜のデータを組合わせて、ES細胞の2状態間遷移を解析。さらに、同一細胞内で2種類のMEMOIR法を並列に使用するシミュレーションを行って、細胞過程を記録し読み出すことが可能なことを示した。
    • MEMOIR法は、ES細胞の分化に限らず、多様な細胞におこる多様なイベントを記録し読む出すことを可能にする。
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