[出典] "Optogenetic Control of Programmable Genome Editing by Photoactivatable CRISPR/Cas9 Nanosystem in the Second Near-Infrared Window" Chen X, Chen Y, Xin H, Wan T, Ping Y. bioRxiv 2019-06-18.

概要

 浙江大学の研究チームは今回、カチオン性ポリマーで被覆した金ナノロッド (APC)と、熱誘導性のプロモータHSP70でドライブするCas9遺伝子を帯びたプラスミド (HSP-Cas9)とからなるナノシステム (APC/プラスミド)を送達することで、第2光学窓 (the 2nd near‐infrared window: NIR‐II)と呼ばれる1000 ~ 1700 nmの範囲の波長の近赤外光によりCRISPR/Cas9の活性を制御可能なことを示した。

APC/プラスミドの仕組み
  • APCのカチオン性ポリマーがプラスミドの細胞内へ送達する機能を担い、APCの金ナノロッドが近赤外光を熱に変換しHSP70を介してCas9を発現・活性化する機能を担う。
  • APC/プラスミドはエンドサイトーシスとエンドソーム脱出を経て細胞質内に移行しHSP-Cas9が細胞核に移行し、APCは細胞質内に留まる。
  • Cas9活性の光遺伝学的スイッチとして機能:近赤外光 (1064 nm)が細胞に届くと、細胞質の金ナノロッドが発熱し、不活性状態のヒートショック因子 (HSF)単量体が活性な三量体を形成し、HSP70プロモーターのヒートショックエレメントに結合することで、Cas9遺伝子の転写が活性化する;近赤外光が消えると細胞内温度が低下し、HSF三量体がHSEから遊離し不活性な単量体へと分解し、転写停止。
APC/プラスミド系の特徴
  • APCのトランスフェクション効率が高いことが、Cas9遺伝子編集の効率向上に寄与する。
  • 赤外光照射の時間と回数を調節することで遺伝子編集を精密にかつ可逆的に調節することが可能である。
  • NIR-IIを利用可能なことから、生体組織深部の細胞における遺伝子編集を体外から調節することが可能である。具体的に、腫瘍モデルマウス体内での腫瘍増殖抑制を実現した。
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