[出典] "Catalytically Active Cas9 Mediates Transcriptional Interference to Facilitate Bacterial Virulence" Ratner HK [..] Charpentier E, Weiss DS. Mol Cell 2019-06-27.

背景
  • CRISPR-Cas9を含むタイプII CRISPR-Casは病原菌と共生菌に高頻度に内在し、バクテリアの獲得免疫機能を担っている。その中で、Francisella novicida由来Cas9 (FnoCas9)の外来DNA切断機構についても、平野論文 (Cell, 2016) (*1)とAcharya投稿 (bioRxiv, 2019) (*2)により明らかにされてきた [ (*1) 2017-08-27 Francisella novicida Cas9の構造決定とPAMの拡張;(*2) 2019-06-21 FnCas9は極めて高精度でありHEK293T細胞に加えてヒトiPSCのゲノム編集も可能である]。
  • 一方で、cas9遺伝子を欠損しているStreptococcus agalactiaeCampylobacter jejuniNeisseria meningitidis、および Francisella novicidaの変異体において、宿主細胞への感染に必要な接着・侵入および宿主細胞内での生存・増殖の過程が阻害され、病原性も抑制されることが知られていた。
  • また、ヒト細胞への感染可能なF. novicidaは、FnoCas9によりリボタンパク質 (bacterial lipoprotein: BLP)、FTN_1103 (1103)、をコードする内在mRNAの発現抑制 (ヒト細胞に対する免疫賦活性抑制)、を介して、ヒト細胞へ感染することも知られていた。この1103発現抑制は、FnoCas9の外来DNA切断の際に利用される~20 bpのcrRNAではなく、~15bpと小型のRNAであるscaRNA* (small CRISPR-Cas associated RNA)とtracrRNAにガイドされてF. novicidaのゲノムに結合することで、実現されている。(* scaRNAは、crRNAsアレイの下流にコードされておりCRISPR遺伝子座の近位のプロモータで転写される)。
  • F. novicidaの病原性には、しかし、1103の抑制だけでは不十分であり、その他の要因が存在することが示唆されていた。
成果
  • Emory UniversityとMax Planck Unit for the Science of Pathogenは今回、FnoCas9による内在遺伝子の転写調節を網羅的に解析することを目指して、ゲノムワイドでのmRNAの発現レベルを、野生株とcas9欠損株との間で比較することから、実験解析を始めた。
  • ゲノムワイドの遺伝子発現プロファイルを比較することで、1,782遺伝子のなかでcas9欠損株における発現が野生株よりも顕著に (2倍以上)上方制御されている4遺伝子 (それぞれ、1103に加えて1101、1102および1101をコード)を同定し、tracrRNA, scaRNAcrRNAの欠損実験なども経て、FnoCas9がscaRNA:tracrRNAのRNAヘテロ二重鎖に誘導されて、F. novicidaゲノムの4遺伝子からなるレギュロンからの転写を抑制することを明らかにした。
  • さらに、scaRNAを改変することで、FnoCas9を介して、4種類の遺伝子以外の遺伝子の転写を抑制することが可能なことを示した。