[出典] "A large-scale CRISPR screen and identification of essential genes in cellular senescence bypass" Liu X, Wei L, Dong Q, Liu L, Zhang MQ, Xie Z, Wang X. Aging (Albany NY) 2019-06-20.

 細胞老化は、細胞の自律的腫瘍抑制を担う一方で、炎症性サイトカインやケモカインなどを分泌することで(senescence-associated secretory phenotype: SASP)がん化および加齢に伴う疾患をドライブする。

 清華大学の研究グループは今回、ヒト皮膚線維芽細胞を対象として、文献マイニング、PPIネットワークおよび遺伝子発現の変異解析 (Differential expression analysis: DEA)を総合して判定した1,378種類の細胞老化関連遺伝子を標的とする12,000種類のsgRNAに基づくCRISPRスクリーンを行い (原論文Fig. 1引用下図参照)、その欠損が細胞老化の回避 senescence bypass 1
(バイパス)をもたらすTP53をはじめとする既知の遺伝子群を同定するとともに、一連の新奇な遺伝子群を見出した (以下、細胞老化が回避されている細胞を'バイパス細胞'と表記)。

 続いて、6種類の新奇遺伝子またはTP53遺伝子をノックアウトしたバイパス細胞のRNA-seq/GESA解析を行った。興味深いことに、CHEK2HAS1またはMDKを欠損したバイパス細胞では、先行研究で同定された45種類のSASP遺伝子群の発現が増殖細胞 (growing cells)と同等か亢進しそのプロファイルが老化細胞に類似していたが、MTORCRISPLD2または MORF4L1を欠損したバイパス細胞ではSASP遺伝子発現が抑制されていた。また、後者では、加齢に伴う神経変性疾患に関わるパスウエイが下方制御されていた (原論文Figure 4引用下図参照)。senescence bypass 4
 本研究により、細胞老化バイパスの機序と結果は多様であり、特定の遺伝子セットの欠損によって老化は免れるが炎症が亢進してがん化のリスクが高まる一方で、他の遺伝子セットを欠損することで、老化を免れつつ (増殖能を維持しつつ)、SASPフェノタイプを抑制する可能性が示された。いずれにしても、がん化と老化を伴わず細胞老化を回避して「活力」を維持するには遺伝子発現の精密な制御が必要である。