(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/11)
  • Corresponding authors: Jose M. M. Caaveiro(東大(現 九大)); José L. Nieva (U. Basque Country)
  • HIV-1の中和抗体10E8については、in vitro での中和試験の結果や結合親和力が比較的低い一方で、in vivo で強力で広域なHIV-1感染阻止能を示すといった特徴の分子機構が明らかになっていない。研究チームは今回、先行研究で見出していた「HIV-1外被糖タンパク質(Env)の一部であるgp41の膜貫通部位近傍(membrane-proximal external region, MPER)から膜貫通ドメイン(TMD)の接合部にかけての構造情報」をもとに実験を設計し、10E8とgp41の相互作用の詳細を明らかにした。
    • [先行研究] HIV-1エンベロープタンパク質(Env)の一部であるgp41の膜貫通部位近傍(membrane-proximal external region, MPER)と膜貫通ドメイン(TMD)の接合部に連続的なH2α-ヘリックスが存在することを見出し、“MPER-N-TMD”と命名していた(Apellaniz, B. et al., 2015)   
      [参考図1 Figure 1-aの中のH2::構成図の下のリボン図は、溶液NMR構造データをもとにした細胞膜に類似の合成ドデシルホスホコリンにおけるMREPp(PDB 2M8O)とCpreTM(PDB 2MG3)ペプチドのモデル図]。
    • MPER-N-TMD領域に由来するペプチドがスキャフォールドとなってMPERのC末端領域を標的とする抗体の親和性を高めるという仮説のもとに、H1とH2のヘリ全体をカバーするペプチド10E8epを設計した。 
      [参考図1-Figure-1-b 参照] 
      4325000143250002

    • 10E8epと10E8 Fabとの複合体構造をX線結晶構造解析によって分解能2.4 Åで明らかにした。これまでにクライオ電顕単粒子再構成法で得られた構造は分子機構を論じるには低分解能(8.8 Å)であった(Lee, JH. et al., 2016
      [参考図2:10E8epと10E8 Fabとの複合体構造 PDB 5GHW]
    • MPER-T-TMDのFabへの結合構造は10EBが細胞膜の表面に平行に位置してエピトープに結合することを示した。 
      [参考図1 Figure 2]
    • 生物物理学と生化学の手法による解析と変異導入実験は、10E8のTMDヘリックスに対する親和性の強さと抗体の中和能力が相関することを示した。HIV-1 gp41のMPER/TMD領域に存在するヘリックスが抗MPER中和抗体の中和能力の鍵である。