[出典] Research Highlight "A map of human individuality" Koch L. Nat Rev Genet. 2019-06-25.; "A genomic atlas of systemic interindividual epigenetic variation in humans" Gunasekara CJ [..] Coarfa C, Waterland RA. Genome Biol. 2019 Jun 3;20(1):105.

 CpG部位のDNAメチル化は哺乳類の正常な発生と細胞分化の鍵を握っている。DNAメチル化と遺伝子発現の解析はこれまで、主として、細胞型そしてまたは組織に特異的なDNAメチル化の状態を、全ゲノムバイサルファイトシーケンシング (whole genome bisulfite sequencing; WGBS)によって解析する試みが続いてきた。Baylor College of Medicineの研究グループは今回、DNAメチル化プロファイルの細胞型や組織に依存する変動ではなく、個人に依存する変動 (systemic interindividual variations; SIV)に注目した。

 研究グループは、NIH Genotype-Tissue Expression (GTEx)プロジェクトに登録されている10人のオートプシーまたは臓器移植の際に得られた組織に由来する三胚葉にわたるサンプル、甲状腺 (内胚葉)、心臓 (中胚葉)、脳 (外胚葉)、を対象として、偏りのないdeep WGBS解析を行った。のべ30サンプルから150-bpペアエンドの~12億リード (reads)を得て、リード深度 (read depth)は平均~40xに達した。100-bp分解能でCpGメチル化を同定し、少なくともCpGサイトを一つ含むリード深度が十分な ~ 1,300万ヶ所の領域 (bin)を、3種類の組織ごとにクラスタリングした (原論文Fig. 1引用下図  a, b 参照)。CoRSIV
 各binのメチル化レベルをもとに、bin-binの相関係数に続いて組織間の相関係数 (inter-tissue correlation: ITC)を計算し、ITC ≥ 0.71 の領域 (同一サンプル内でのCpGメチル化レベルの組織依存性が比較的低い領域)を“correlated regions of SIV" (CoRSIVs)と定義し、その中で、少なくとも5つのCpGsを帯び個体間の変異が大きい (> 20%) (上図 f 参照) CoRSIVs 9,926種類を選択し、解析を続けた (以下、単にCoRSIVsと表記)。
  • CoRSIVsはゲノム領域の~0.1%に過ぎないが、互いにゲノム上で長距離にわたる相互作用を帯びていた。
  • CoRSIVのメチル化の個人差の60%は、シスエレメントにおける変異に対応していたが、残る40%についの遺伝的作用は明確にならなかった。
  • GTExからのサンプルに基づくデータ解析に続いて、Multiple Tissue Human Expression Resource (MuTHER)をもとにし先行研究(Am J Hum Genet, 2013)で得られたDNAメチル化と遺伝子発現のデータを再解析し、645遺伝子に関連する (associated) CoRSIVsについて、DNAメチル化と遺伝子発現の相関関係が、他の組織 (皮膚とリンパ芽球様細胞)と共通することを確認した。したがって、侵襲性の低いリキッドバイオプシーを介して末梢血のデータを解析することで得られるCoTSIV領域のメチル化プロファイルから、そのCoTSIV領域と関連する遺伝子の脳における遺伝子発現プロファイルを推定可能となる。
  • さらに、最近発表された1,319件の“epigenome-wide association studies” (EWASdb) (Nucleic Acids Res, 2019)のデータを再解析し、コントロール領域に対してCoRSIVには癌を除く多様な疾患関連CpGサイトが顕著にエンリッチされていることを同定した。
  • アトラスのWebサイト:A Genomic Atlas of Systemic Interindividual Epigenetic Variation in HumansCoRSIV Web