[出典] "RNA proximity sequencing reveals the spatial organization of the transcriptome in the nucleus" Morf J et al. Nat Biotechnol 2019-07-01

 Babraham Instituteをはじめとする英国、スペイン、メキシコ、米国の研究グループは今回、細胞核内で共局在するlncRNAを含む転写物のペアまたは集団の共局在を同定可能とする"Proximity RNA-seq"を開発した。

Proximity RNA-seqとは
  • 研究グループは始めに、ドロップ型のW/O形エマルジョン (water-in-oil emulsion)内で磁気ビーズを26塩基の合成DNAによるバーコンティング可能とするビーズ上PCRプロトコルを開発し、1バーコード/ビーズを達成する効率の高い条件を特定した。その上で、ビーズに結合したバーコードを、逆転写プライマー用にランダム15塩基分伸長する。
  • 一方で、標的細胞 (本研究ではヒト神経芽細胞腫細部株SH-SY5Y)から細胞核オモジネートを調整しておき、RNAsを内包する核内粒子をエマルジョン (water-in-oil emulsion)に導入する (原論文Fig. 1参照)。
  • 続いて、エマルジョンの中でバーコード付きビーズと結合した核内粒子中のRNAsを逆転写し、NGS用cDNAライブラリを調整する。
Proximity RNA-seqから見える共局在
  • 転写物の25%が他の転写物とバーコードを共有し (cobarcoding)、共局在が示唆された。事実、核小体に豊富で、他の数百のsnoRNAsと共存することが知られているノンコーディングsnoRNA U3 のcobarcoding RNAsは、非-snoRNAsに対して圧倒的にsnoRNAsであった。ドロップレットを使用しないコントロール実験ではこのcobardingは見られなかった。
  • 転写物の25%にcobarcoding転写物が見られた。
Proximity RNA-seqから得られる情報
  • イントロン対エクソン比が、RNA除去RNA-seq実験からの結果の4倍で、また、イントロンの5'末端のリードが3’末端のリードを上回り新生RNAが豊富であることが示唆された。
  • 互いに近接している多重なRNAsを同時に検出することで、RNAsが密な空間と疎な空間を識別することが可能になった。
  • 研究グループは、snoRNAsと一部のタンパク質コーディングRNAsが混在するコンパートメントI、ならびに主としてタンパク質コーディングRNAsからなるコンパートメントIIを識別し、それぞれが、核小体とその隣接領域、ならびに、核周縁部 と核質に対応することを、示した。この結果は、3D RNA-FISHからの結果と整合し、DNA近接ライゲーションの実験では得られない情報であった。
  • また、コンパートメントIIで細胞特異的RNAsと選択的スプライシングが増加することも同定した。