1. プール型CRISPR KOスクリーンに依り、リソソームのダイナミクスを障害し空胞化を誘導する遺伝子を同定
 [出典] "CRISPR knockout screen implicates three genes in lysosome function" Lenk GM [..] Kitzman JO. Sci Rep 2019-07-03.
  • リン脂質PI(3,5)P2の生合成不全は、細胞質にリソソーム由来の大きな空胞が蓄積することが特徴の神経疾患の要因である。
  • University of Michiganの研究グループは、CRISPR KOスクリーニングに組み合わせ可能なリソソーム・コンパートメント拡大のアッセイ法を開発し(原論文Figure 4引用下図参照)、lysosome
    ヒトHAP1細胞において、リソソーム内空胞化を引き起こす遺伝子として同定されたVAC14を含む15遺伝子を同定し、その中で、新たに同定された3遺伝子 (C10orf35LRRC8A、およびMARCH7)について、スクリーン結果を検証し裏付ける結果を得た。
2. CRISPR/Cas9による相同組み換え修復を介したヒト造血幹細胞のHBB遺伝子in vivo 編集においては、DNAドナーテンプレートの導入法として、ssODNが、rAAV6に優る
[出典] "In Vivo Outcome of Homology-Directed Repair at the HBB Gene in HSC Using Alternative Donor Template Delivery Methods" Pattabhi S [..] Rawlings DJ. Mol Ther Nucleic Acids 2019-07-07.
  • Seattle Children’s Research Instituteとbluebird bio, Inc.の研究チームは、健常者のCD34陽性末梢血幹細胞に、HBB遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9 RNPとDNAドナーテンプレートとを導入することで、鎌状赤血球症 (SCD)変異 (E6Vアミノ酸変異に相当するGTCまたはGTG)またはサイレント変異 (E60otEをコードするGAA)を誘導する実験において、DNAドナーレンプレート導入法の効率を比較した。
  • In vitroでは、2.2-kbの相同アームを帯びた組み換えアデノ随伴ウイルス6 (rAAV6)送達が、168-bpの一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド (ssODNs)導入よりも高いHDR効率とHDR/NHEJ比をもたらした。
  • 一方で、HDRを介してGTC変異を導入したCD34陽性細胞 (2 × 106個)を移植後12 - 14週経過したNBSGW免疫不全マウスの骨髄と脾臓において、変異導入細胞数は減少するが、ssODNs細胞送達マウスにおける変異導入細胞数はがrAAV6送達細胞移植マウスの~6倍に達した。
3. SaCas9とsgRNAsペアに依り、ヒトDMPK遺伝子内の異常伸長CTGリピートを削除し、筋強直性ジストロフィー (DM1)モデルマウス骨格筋細胞内のRNA凝集体 (RNA foci)を縮減
[出典] "Genome Editing of Expanded CTG Repeats within the Human DMPK Gene Reduces Nuclear RNA Foci in the Muscle of DM1 Mice" Lo Scrudato M [..] Buj-Bello A. Mol Ther 2019-06-05.
  • 2,600 CTGリピートを帯びたDM1患者由来筋芽細胞にレンチウイルスにより、CTGリピートの両端を標的とするsgRNAsペアとSaCas9を送達することで、DMPK遺伝子内の標的DNA領域の削除、リボ核タンパク質凝集体の消滅、種々の転写物におけるスプライシング異常の修正を実現した。
  • さらに、>1,000 CTGリピートを伴いヒトDMPK遺伝子を帯びたDMSCXLマウスの前脛骨筋にSaCas9-sgRNAsを注入することで、筋核における病原性RNA凝集体 (RNA foci)数が減少することを見出した。
4. CRISPR技術に基づく統合失調症のリスクをもたらす遺伝子変異の機能解析
[出典] "CRISPR-based functional evaluation of schizophrenia risk variants" Rajarajan P [..] Brennand KJ. Schizophr Res 2019-07-03.
  • 死後脳組織に見られる変異の作用を同定する手法に加えて、患者由来ヒト多能性幹細胞とCRISPRゲノム編集技術を組み合わせた手法による原因遺伝子の同定をレビュー
5. 硝子体網膜症の原因となるMDM2遺伝子プロモータのSNPの作用をdCas9で阻止
[出典] "Inactive Cas9 blocks vitreous-induced expression of Mdm2 and proliferation and survival of retinal pigment epithelial cells" Chen N, Hu Z, Yang Y, Han H, Lei H. Exp Eye Res 2019-07-03.
  • MDM2は癌抑制因子p53を抑制する主な因子であり、MDM2の第2プロモーター (P2)におけるSNP (309G)は、硝子体におけるMDM2の発現を亢進し、p53を分解し、増殖性硝子体網膜症を誘導する。
  • Harvard Medical Schoolの研究チームは今回、ヘテロ型変異を帯びたヒト網膜色素上皮細胞へMDM2のP2 を標的とするdCas9 (D10AとH840A変異を導入したCas9)-sgRNAを送達するレンチウイルスベクターを設計し、このベクターがウサギモデルにおいて、コントロールに比して、硝子体細胞の増殖、アポトーシス、遊走および収縮を抑制することを示した。
6. CRISPR/Cas9遺伝子編集による油料種子カメリア・サティバの品質向上
[出典] "CRISPR/Cas9 editing of three CRUCIFERIN C homoeologues alters the seed protein profile in Camelina sativa" Lyzenga WJ [..] Rozwadowski KL. BMC Plant Biol 2019-07-04.
  • Agriculture and Agri-Food Canadaの研究グループは、カメリナ・サティバの種子貯蔵タンパク質CRUCIFERIN C (CRUC)をコードする3種類のホメオログを、CRISPR/Cas9による未成熟終止コドン導入によりノックアウトすることで、油量を変えず、アミノ酸組成を改変可能なことを示した。