(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2014/10/26)
[出典] Gilbert, LA. et al. "Genome-Scale CRISPR-Mediated Control of Gene Repression and Activation." Cell. 2014 Oct 23;159(3):647-661. Published online 2014 Oct 8.

 ヒトの広汎な細胞型と病態について、遺伝子転写物とその発現レベルの網羅的カタログが急速に充実しつつあり、膨大な転写物の機能解析が待たれている。今回、CRISPRi(CRISPR interference)の共同開発者である
Jonathan S. Weissman等を中心とするUCSFの研究グループとホワイトヘッド研究所のHidde L. Ploeghは、CRISPRiとCRISPRa【注参照】によって、転写物の機能と動態の解析を促進可能なことを示した。
  • リシン毒素に対する感受性の調節に関わる49種類の遺伝子の転写開始点(TSS)の周辺10-kilobase領域をターゲットとしてカバーする54,810個のsingle guide RNAs(sgRNAs)と、ネガティブコントロール用の1,000個のsgRNAsのライブラリーを構築。
  • K562細胞のリシン毒素感受性を表現型の指標として、前述ライブラリー中のsgRNAsの効果を評価し、内在遺伝子を90〜99%ノックダウンあるいは最大限の発現活性化をもたらすsgRNAの設計指針を特定し、CRISPRi/aのオフターゲット効果が極めて小さく、CRISPRiの選択性が極めて高く、dCas9が細胞毒性を示さないことを確認。
  • 転写物のゲノムワイドでの機能解析の実行可能性をテストするために、ヒトにおいてタンパク質をコードしている15,977種類の遺伝子(20,898種類のTSS)を標的として1遺伝子あたり10種類のsgRNAと、コントロール用の11,219種類のsgRNAのライブラリーを調整。
  • 転写物のCRISPRiとCRISPRaによるゲノムワイド解析のモデルとして、それぞれ細胞成長とコレラ-ジフテリア融合毒素(CTx-DTA)への感受性を指標とする2種類の遺伝子スクリーニングを実施。細胞成長スクリーニングで浮かび上がってきた遺伝子は、DNAの翻訳・転写・複製に関わる必須遺伝子、癌抑制遺伝子ならびに発生・分化にかかわる遺伝子。毒素スクリーニングで浮かび上がってきた遺伝子群から、毒素に応答する既知のパスウエイとタンパク質複合体に加えて、これまで毒素応答との関連が知られていなかったパスウエイ(E-RAD)とタンパク質複合体(COGGARPなど)を同定。
  • CRISPRi/aによって、転写物発現調節のダイナミックレンジ〜1,000倍を実現(〜100分の1への抑制から〜10倍への活性化まで)。CRISPRi/aによる細胞内の転写物量やタンパク質量と機能の相関解析の可能性を提示。
  • CRISPRiによって長鎖非翻訳RNA(lncRNAs)の転写を抑制。CRISPRiによるlncRNAsの機能解析の可能性を提示。
【注】
  • CRISPR interference(CRISPRi)は、エンドヌクレアーゼ活性を欠損させたCas9(dCas9)に転写抑制因子(KRAB)を融合させた因子をゲノム上の標的遺伝子座へ誘導するsingle guided RNA(sgRNA)によって、標的遺伝子の発現を抑制する手法。
    CRISPRaは、転写活性因子を融合させたdCas9とsgRNAによって、標的遺伝子の発現を活性化する手法。本研究のCRISPRaでは、dCas9に転写活性化ドメインを多数融合させた
  • CRISPRaは、転写活性因子を融合させたdCas9とsgRNAによって、標的遺伝子の発現を活性化する手法。本研究のCRISPRaでは、dCas9に転写活性化ドメインを多数融合させたsunCas9を使用した。
  • Wikipeidaからの参考図:(1)CRISPRi概念図(2)dCas9とエフェクターによる転写抑制と転写活性化の概念図(3)CRISPRiワークフロー