[出典]
"Structural basis of DNA targeting by a transposon-encoded CRISPR-Cas system" Halpin-Healy T, Klompe S, Sternberg S, Fernández I. bioRxiv 2019-07-18 > Nature 2019-12-18
構造情報:
 EMDB - 20349, 20350, 20351
 6PIF VC-Tn6677 multisubunit CRISPR/Cas effector, close conformation (3.4 Å)
 6PIG VC-Tn6677 multisubunit CRISPR/Cas effector, open conformation (3.5 Å)
 6PIJ VC-Tn6677 multisubunit CRISPR/Cas effector, close conformation (2.9 Å) 

背景
  • タイプI CRISPR-CasシステムのエフェクターCascade複合体は、ヘリカーゼかつヌクレアーゼであるCas3と協働して外来DNAを分解する。一方で、Cas3を欠損している宿主細胞では、バクテリアTn7様トランスポゾンと協働して、DNA断片の転移を誘導する。
  • コロンビア大学のS. H. Sternbergの研究チームは、Cascadeを帯びたVibrio choleraeトランスポゾンTn6677を利用して、二本鎖DNA切断を介すことなく、大腸菌ゲノムへのドナーDNAのノックインを実現していた [*1]。
  • 同チームは今回 (Nature NEWS & VIEWScrisp_bio記事 [2*])、同大学の構造生物学者Israel S. Fernándezと共同で、その構造基盤をクライオ電顕単粒子再構成法により解明し、bioRxivに投稿した。
構造
  • Sternbergチームは先行研究 [*1]にて、V. choleraeトランスポゾンTn6677の遺伝子構造モデルとして、L-//- tniQ - cas8/5 -cas7 - cas6 - CRISPR array - //- tnsC - tnsB - tnsA - R (tniQtnsDのホモログ;LとRは反復配列)を提案していた。
  • Sternbergチームは今回、ヘッドトゥーテールで二量体を形成したTniQがCascadeの中のcrRNAの3'末端近位に位置するCas6とCas7に結合し、一方で、Cascadeの中のCas8/5融合タンパク質が5' crRNAのハンドルに結合しフレキシブルな挿入ドメインを介してTniQに接し、TniQ-Cascadeの複合体を形成する構造モデルを提案した (筆頭著者のTweetからの引用した下図参照)。
  • さらに、標的DNAが結合したクライオ電顕再構成構造から、PAMの認識とR-ループ形成を担う相互作用のモデルも提案した。