[出典] "Biological Plasticity Rescues Target Activity in CRISPR Knockouts" Smits AH, Ziebell F [..] Steinmetz LM, Drewes G, Huber W. bioRxiv 2019-07-26 > Nat Methods. 2019-10-28. (アブストラクト比較結果文末に)

 EMBL, GlaxoSmithKlineならびにHorizon Genomics GmbHの研究グループは今回、CRISPR-Cas9が誘導するフレームシフトが、タンパク質の発現および機能をノックアウトするか、トランスクリプトミクスとプロテオミクスによって検証した。
  • HAP1細胞において、CRISPR-Cas9が136種類の遺伝子に誘導したフレームシフト193種類の結果を、RNA-seqSPS MS3質量分析 (Thermo Fisher Scientific)で解析した。
  • 標的遺伝子の3分の1が、レベルは低いがタンパク質を発現し、中には、タンパク質を野生型のレベルまで発現する事例もあった
  • その分子機構として2種類同定した: (1) 翻訳が変異ヶ所以後で再起動され、N末端領域が欠損したタンパク質発現に至る, (2) フレームシフトが発生したエクソンがスキップされて、遺伝子内部の領域が欠損したアイソフォーム発現に至る。
  • また、K562細胞株においても、標的遺伝子からN末端領域が欠失したタンパク質 (BRD4、DNMT1およびNGLY1)が発現し、さらに、ある程度の機能を発揮することを見出した。
  • CRISPR-Cas9 KO株の表現型の解釈には、編集を受けた遺伝子に由来するタンパク質発現さらには機能に留意が必要であると、指摘した。
  • [crisp_bio注] フレームシフトにより未成熟終止コドンが形成されてもN末端領域から翻訳された短縮タンパク質が一定の機能を示すという報告もあるが、いずれにしても単一のフレームシスト誘導に基づくノックアウトに伴うこの問題は、標的遺伝子を多重なsgRNAsで標的することで、解決するとされている。
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[bioRxivとNature Methodsのアブストラクト比較: 左側 bioRxiv; 右側 Nature Methods]
 2019-10-29 8.12.33